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魔導奏者りりかさん  作者: 兵郎
三章 アンダーウィザーズの陰謀編
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十七話 始まりの炎と天城家の家庭事情

今回は物語のキーとなる回想と司の家庭事情がメイン



空には暗黒の闇が広がり下には烈火の炎が舞っている。その間に三つの影があった。二つは隣り合い一つはその二つと向かい合う形となる。


二つある影の一つは青年のような顔つきをしており袖や裾の広がった白い衣服を纏い背中からは白い羽を生やし頭上に光の輪を浮かせ天使を思わせる姿をしている。


もう一つは女性の形をしておりバスト部分を覆い胸元が大きく開き背中の上部分が空いた黒い衣服を纏い下半身には同じく黒いミニスカートを纏い背中に黒い蝙蝠のような羽を生やし頭部からは鋭い牛のような角を生やしている。こちらは悪魔の姿に近い。


「おい、黒いの。まだ行けるか?」

白い影が黒い方に言う。

「馬鹿にしないで、わたしだって悪魔の一人よ。あんた達天使には負けないわ」


二つの影はところどころ服がボロボロになっており四肢も損傷が激しくなっている。


反対側には少女らしき影がある。小さい背丈に控えめな胸、長い髪の毛が風にたなびき背中から歪つな形状の羽が生え腕や足からは大きな爪が生え頭部にも巨大な爪が生え少女型をとりつつも天使でも悪魔でもなく怪物に近い形相である。


「ならどうする?放置すればお前の大好きな人間の街が火の海だぞ」

天使が挑発するかのように言う。


「うっさい馬鹿!言われなくても分かってるって!」


「それでこそだ」


悪魔の方が怪物の少女に立ち向かい天使もそれに続く。




周囲には火が回り家の中は最早逃げ場がない。男の子がその中を歩いていた。


「とーうさーん!おかーあーさーん!」

男の子は辺りを見回しながら叫び父や母を探す。しかし火の中ではそれを行うのは容易ではなく徒労に終わるばかりだ。


「ああっ」

場所がキッチンだったのか食器戸棚が倒れ男の子を襲う。男の子は重さに耐えきれず下敷きになってしまう。燃え盛る業火の中彼は死を覚悟し意識が朦朧としていた。意識が無くなる間際、彼は目の前に白い何かが見えた気がした。


「お願い、助けて……。僕を一人にしないで……」

意識が朦朧とした中男の子は白い何かに手を延ばす。






「待って、置いてかないで!」

天城司(あまぎつかさ)は手を延ばし勢いよく起き上がる。


「いっつー」

「ちょっと、急に起きないでよ司くーん」


勢いよく起き上がったせいで側にいた黒羽彩音(くろはあやね)にぶつかってしまう。


「あれ、なんで僕の部屋に彩音さんが?」


「司くん珍しく起きてこないから気になって見に来たら苦しそうな感じだから気になっちゃって……」


彩音が恥ずかしげに頬をかく。


彩音は元々司と同居してるわけではない、ある事件をきっかけに彩音が以前の住居にいられなくなったため司が自分の居候先を紹介したのだ。


「あと彩音さんとか他人行儀だから彩音でいいよ、年も同じだし……」


「いや、なんていうか呼び捨てはなんか恥ずかしいていうか……」

司が遠慮気味に顔を逸らす。


「もう一緒に住み初めて一ヶ月になるんだからそういうの駄目じゃないかな」


「わ、分かったよ……。あ、彩音ちゃん……」


「それでよし!で、どんな夢見てたの?」


「夢っていうか昔の記憶かな。半分天使の身体になった時の」


「司くんて元々は普通の人だったんだ」


「ほら、この間李梨花さんがこの間言ってたじゃん」


「五年前の火事ってやつ?」


「そう、ちょうどその時の」


「それで、どうやって司くんは天使になったの?」


「火事でなんか下敷きになってそしたら白い何かが出てきて……次起きたら病院にいておじさんが来て退院したらこの家でお世話になり始めたてところかな」


「おじさんて大学教授やってるんだっけ」


「神話学のね」


司が今居候している家は父方の叔父で大学で神話学の教授をしているのだ。


「あ、朝ごはんまだ出来てないからよろしく」


「僕がつくんのかよ!」


因みに司の叔父に妻はいない。家の家事のほとんどは司が担当している。


着替えを終え私室のある二階から一階に降りる司、キッチンに入り朝食の準備を始める。


「いーつもすまないねー」

まだ寝間着のままの叔父が現れ司を労う。


「一応今日は時間があるからいいものの万が一僕が寝坊したらどうするんですか」


「大丈夫だろ、お前が寝坊するとか滅多にないし」

あっけんからんと答える叔父。


「いいじゃん、司にいに全部任せれば安心なんだし」

リビングの方から10歳ほどの年の少女が司に話しかける。須藤真奈美(すどうまなみ)、元は叔父の教え子の子供なのだがシングルマザーで仕事と育児の両立に無理が出たためかつて教師である司の叔父に預けたのである。


「ごめんね司くん、わたしが少しでも料理出来ればいいんだけど。自分の家にいたころはお母さんに任せきりだったから」

彩音が申し訳なさそうに言う


「その気持ちだけで嬉しいよ。それに比べてあの二人は……」

司は家庭内の家事に対する浅はかさにため息しか出ない。

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