十六話 仮面の騎士登場
美羽羅対李梨花戦後エピローグ的なのと新章突入
美羽羅を倒したと思ったその時新たな人物が司達の目の前に現れる。その人物は顔から上をすっぽり覆った仮面に胸から肩をカバーする鎧、鎧の下は騎士が式典などで着る豪奢礼服を纏っている。鎧はオレンジがかかった赤、衣服はオレンジに金、仮面は白にオレンジ装飾がかかっついる。
「もしかして、お母さんを雇ってる人?」
彩音が聞く。
「君の母親?ああ、黒羽紗栄子のことか。別に私はあの人を雇ってるわけではないよ 。私はあくまで組織の一員で彼女と組織のパイプ役に過ぎないのでね。ちょうどその役が前任者から引き継がれてね、恐らく彼女を誘ったのは彼だろうよ」
騎士の男が答える。
「ねえ、どういうつもりなのあなた達!何の罪もないお母さんにお父さんを殺させて、別の人をまた犯罪に誘う手伝わせるなんておかしいよ!なに考えてるの?!」
彩音が怒りに声を震わせる。
「あくまで私は組織に雇われてるに過ぎない、私を責めるのはお門違いじゃないかな」
「ふざけないで!あなた達のせいで、あなた達のせいで!」
「落ち着け彩音!李梨花がこんなんなんだぞ!今下手に動いたらやられるぞ!」
荒ぶる彩音を沙紀絵が羽交い締めにして止める。今の李梨花は美羽羅との体力を消耗している、下手にその隙を突かれて李梨花が死ぬ可能性もあるのだ。
「ごめん……」
ここで司が前に出る。
「ねえ、君どっかで会ったことない? 」
「知らないなぁ………ん、言われてみればどこかで……。君、アマツカて人の弟か何かかい?」
騎士の男はしばし顎に手を当て考えこむが何かを思い出したように言う。
「アマツカ、それが私の名か」
「司くん?」
「おい、どうした?」
司の雰囲気が変わりどこか人間離れした神秘的なものを思わせる顔つきになる。
「どうやら弟くんではなくアマツカくん本人だったみたいだね。さあ、この間の決着を付けようか」
騎士の男がレイピアを構える。
「ああ、そうだな。久しぶりに本気を出そうか 」
司も光の剣を出して戦いに備える。
同時にバッと跳躍しぶつかり合う二人、剣と剣が激しくぶつかり離れる、再びぶつかる。それの繰り返し。
「なにあれ、あの二人ちょっと速くない?」
李梨花が騎士の男と司の動きに驚くことしか出来ない。
「ねえ、追えてる?」
李梨花は魔法使いの先輩である彩音と沙紀絵に聞いてみる。
「追えるには追えるけど……」
「いや無理だろ、追えるけど追いつけはしないだろうよ」
降参という感じの彩音と沙紀絵。
ザザーッという音共に後ろに下がる騎士と司。
「相変わらず強いね君は」
騎士が感心したように言う。
「まだまだ本気出せるぞ」
司が肩をすくめる。
「気が変わった。元々私は海浦女史の様子を見に来ただけだからね」
騎士が気絶した美羽羅を抱き上げる。
「逃げるつもりか」
「ああ、逃げる。もう少し戦ったら私が死にそうだ」
騎士は帰り際、振り向く。
「それと、君が五年前に殺した女王様だけど彼女はまだ生きているよ」
「なっ、どういう意味だそれは!」
司をよそに飛翔し飛び立つ騎士。
「ねえ司、五年前て確かあんたが火事に巻き込まれたって言ってたあの……」
李梨花が司に聞く。
「大したことじゃない、向こうの世界から逃げて来た怪物を追ってきたら死にかけて生き残るためにこの世界の人間と融合した、それだけのことだ。代償に私の意識が眠ることになって記憶がいくらか欠落してるがな」
「向こうって、あんた別の世界から来たの?」
「ああ、因みに我々のいた天界の他に魔界と言って悪魔の世界が……」
「司?」
「えっと、僕今までなにしてたんだっけ……」
司の雰囲気が元の一般的な中学生なものになる。
「覚えて、ないの?」
「変な騎士の人が出たとこまで覚えてるんですけど…… 」
「人間と天使の融合がまだ不安定てことかしら 」
「さあ……?」
そこへ彩音達が近づく。
「ま、なんにしてもこれでしばらくは美羽羅ちゃんは襲って来ないね」
「結局変な仮面男のせいで逃げられちまったけどな」
「ハハハ、まあいいわよ別に。一度勝ったんだし」




