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獣の主人~世界再考~  作者: 狗神キラン
依頼屋
3/4

第三話「環境汚染の大罪」

ナマヌルイワァッ!

認められぬ一人の少女

自分に無き力を妬ます

七つの大罪一つの嫉妬

現れる狂気新たな大罪


~第三話~「環境汚染の大罪」


 冷たい風が響く中、三匹の狼が走っている。

 それだけじゃない、人間が跨がっていた。

 メオと、センオウ、一人の少女だ。

 その背中は意外に広く、乗っても居心地が良い。

 ……揺れは気になるが。

 月の光のおかげで、辺りを見回せれる程には、明かりが残っている。

 残念ながら、あの絶景はもうなくなっている。

 二人はだんだんと冷静さを取り戻すなか、センオウは中折帽を軽く押さえて、軽い笑顔でメオに問い掛ける。


「あいつ、少し笑顔だったが、敵意はもう無いのかね?」


 どうやら、少女の笑顔は見えていたようだ。さすがに内心までは分かってはいないが。

 そして、センオウの問い掛けに自信を持ったかのように、豪快に返答する。


「おうとも! なんだかんだで俺は人を見分けれる力を持っている! 信じろ!」


 そう、メオは物凄い「直感」を持っている。

 このおかげで、メオの知り合いに悪者は居ない。

 無論、何に対してもその直感は生かせられる訳ではない。

 戦闘においては、直感に付いていける体も必要だ。

 これに置いては、まだらあまり体が出来上がっていないため、役には立ちにくい。

 とは言っても、これ以外の事、さっきの「枝を持ってろ」も、戦闘になると思っての直感だろう。

 だから、多分、大丈夫だ。

 この少女は、きっと、敵意はない。

 そう、センオウは思って、


「あぁ、そうだな」


 と、メオに笑って、返した。

 風が、ピュウ、ピュウ、と耳を凪ぎ払う。

 その音のせいで、この声は少女には届きはしなかった。

 でも、少女は今も、まだ、少し、笑っている。

 声には出てないものの、顔には出ている。

 何が理由で笑っているのかは、そこまで、センオウは調べはしない。

 もう、興味はないからだ。

 そして、二人とも、黙ってこの景色をしばらく、眺めていた。


 月の明かりが少し、沈みかかっている。

 道無き道を、狼は、上から下へ、横へ曲がって、水辺を飛んで、華麗な移動を繰り返していた。

 未知の体験に、この長い移動時間も、二人には短く見えた。

 しかし、体感はそうでも、体内はそうにはいかないみたいだ。

 何回目かの、森の角を曲がったとき、急にメオの腹の音が鳴る。

 ぐぅー、と、かなり大きな音だ。

 少し、静寂が続いたあと、大爆笑が響く。

 メオも、センオウも、少女も、笑った。


「メオ、お前、笑わせんなよ」


 センオウが笑いを堪えながら、メオに話しかける。その顔は、堪えと、冷えで、ほんのりと赤い。

 メオは、少し恥ずかしそうに、


「うるせえな! 腹が減ってんだよ!」


 と、笑いながら言った。

 少女はクスクスと笑っているだけだが、一見、この状況を見ると、とても親密な関係のように見えるだろう。

 まるで、さっきまでの戦いが嘘のように。

 もしかしたら、このメンバーは本当に、良い関係になるのかもしれない。


「待ってて、もう少しで群れにつく」


 少女がメオに振り向いて言う。

 その顔には、敵意は無いように見えた。

 それに、メオもセンオウも、心に安らぎを覚えた。


 しかし、このほのぼのは、長くは続かなかった。

 少女の顔つきが、変わった。

 それは、怒り、悲しみ、焦り、なんとも言えないが、良くない表情とは言える。

 二人は、これに違和感を覚える。

 これは、俺達のせいなのか。何か、やらかしたか? 敵意を持ったか。等と、自問自答を繰り返していたが、少女の目線に、メオが気づいた。

 少女が見ていたのは、メオ達では無い。

 目線は、その上を向いている。

 これについて、確認するために、メオが振り向くと、突然、気持ちの悪い、掠れた高い声が静かな森に響いた。


「ナマヌルイ、ナマヌルイワァッ!」


 狂気が現れる。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 狼達が、少し、動揺するのが見えた。

 そして、センオウが、何事かと、後ろを振り向く。

 ……おかしい、何もいない。

 暗闇と、狼の走る振動で視界が悪いにしても、だ。

 後ろに何かが付いてきているには間違いない。

 明らかに、後ろから聞こえたのだから。

 メオも、センオウも、この異常事態に少し、あせる。

 メオは、銃を取り出そうと、仕草をするが、自分を支える手が片手だけだと、バランスがとれなくなったので、やむを得ず、取り出すのをやめた。

 しかし、落ちる覚悟で、銃を取る準備はできている。

 センオウは、周りを見渡す。が、やはり、何もいない。


「その友情! 実にナマヌルイワよォ!」


 まただ、また、あの掠れた高い声が、辺りを包む。

 しかし、周りには何もいない。

 おかしい、明らかにおかしい。

 二人は、恐怖を感じる。様々な、不安が脳を横切る。

 少女は、しばらく、メオの頭上、その一定の場所を見つめ続けると、こう呟く。


「少し、遠回りする。速度もあげる。しっかり、捕まって。」


 この声は、ギリギリ二人に届いた。

 二人は、同時にうなずいて、後ろを警戒しながら、三人共、狼の首に捕まる。

 なぜ呟いたのか、それは、作戦だ。

 遠回りするのは、恐らく、このまま声の奴と、群れとやらに、遭遇させるのを避けるためだろう。

 恐らく……驚異的な力を持っている可能性が、高い。あの、少女が注意をしているのだから。


「あれ? あれれれれれれれれあれれあ? 急に! 速度を!! アゲタ、ヤ、ぁあああ!!!」


 にしても、気味が悪い。言葉になっていないような言葉を淡々と、耳が痛くなる大声で喋っているのだ。

 しかも、話し方がバラバラ。

 掠れた高い声で早く喋ったと思ったら、重低音で、遅く喋ったりと。

 まるで、人間ではないかのような。まさしく狂人だ。

 この不安定な声を、メオ達は無視し続ける。

 そうでもしなければ、こちらも狂いそうだからだ。


「ナマヌルイワァッ! そんな速度で、逃げられ、ると、思うな、ヨ?」


 絶えず、この声が続いてくる。

 狼達は、ちゃんと速度を上げているが、若干、ふらふらと、バランスを取れなくなっている。

 乗り心地が悪くて、メオとセンオウは、ふらふらと揺れているが、少女は、あまり動かない。

 狼達に、慣れている証拠だろう。

 この少女を信頼する限り、狼達には、噛まれるなどの心配は、しないでよさそうだ。

 メオが、落ちないように、狼の首を掴んだ瞬間……

 突然、笑い声がする。

 カラカラカラカラと、狂気の笑い声。


「喰らいなさい。環境汚染……あなたたちのアヤマチヨ」


 それは、ただ、静かに放たれた言葉。

 さっきの狂気とはまるで別。ささやくかのように、小さい音量。

 しかし、この声はちゃんと、メオ達には届いた。

 ……理解できなかった。

 その言葉の意味が。全く分からなかった。

 環境汚染? 喰らえ? 何を言ってるんだ? と、少々疑問に思いながらも、絶えず無視する。

 センオウは、今までと変わらない、少し険しい顔で無視をする。

 だが、メオだけは、額に汗を浮かべながら……肩を震わせていた。身体だけは、勘付いていたのだろう。

 メオの目は少女を見る。その背中には、焦りはなかった。

 相変わらず俺達と違って、揺れが少ない。安定している。

 もしかしたら、ずっとこんな生活をしているのか?

 冷静に考えたら、さっきの声が聞こえた時に、少女は、何かに気づいていた。

 まるで、その声の正体が誰なのかを知っているように、その強さを知っているかのように、遠回りの指揮を下した。

 このような生活に、慣れているかのように速やかに指揮を下していた。

 そう、気を紛らわせるために、深々と考えていると、突然、メオは気づく。

 目以外に沈んでいた顔を上げて、目を見開く。

 ――そういえば、この少女は、何かを見ていた。

 俺の上……その一点だけを見つめていた。

 もしや……声の正体が見えている?


 目を見開いていたせいか、風が目に入り、涙が出る。

 目をつぶった後、拭く余裕も無く、急いで後ろを見渡す。

 涙でぼやけて、よく見えない。

 スフマートみたいに、ぼやける視界の中でも、ずっと変わらない夜の森が映し出されている。

 ……やはり、どこにもいない。

 この不可解な出来事に、メオは眉を曲げる。

 少女は、見えているのか?


 そうだ、直接聞けばいいのではないか。

 メオは、小回りに前を向いて、少女に問おうとした。

 ……臭い。腐敗の匂いがする。

 この異常にはすでに二人は気づいていたらしく、片手で鼻を塞いでいる。

 いつの間にか、狼に乗るのに慣れているらしい。片手で体制を保っている。

 単純にメオがバランス感覚がないと言う事は、メオは、考えていなかった。そんな性格だから。


 しかし、そんなことどうでもいい。まずはこの疑問から解決しなければ。

 この少女は声の正体が見えているのかを。

 少女の方に軽く身を乗り出して、小声で問う。


「おい、お前」


 爆音がなる。

 とたんに音がなくなる。

 木が何本も、倒れてきたのだ。

 風が囁く中、メオ達の姿が無くなっていた。


 そこには、狂気の笑い声が、ただ、ただ、響いていた。


 ケタケタケタケタケタケタケタケタと。


三話「環境汚染の大罪」完

~今回の初登場人物~


???


狂人。オネエ口調。しかも、アンバランスな音量で喋る。

なにやら少女と同様、特別な力を持っているらしいが。


―――――――――――――――――――――――――

あまり、納得のいく回ではありません。

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