第4節2部ー任務更新ー
コンテナが襲撃を受け、中に入っていた粒子性兵器が爆発した。その爆発は大きなものではなく、それによる被害はごくわずか。
ただ耳鳴りが激しく、倒れ込んだ衝撃で意識もはっきりしない。視界も狭い中で現状は把握しきれていないため、切れ切れに聞こえてくる言葉を頼りに意識を取り戻そうとしていた。
「負傷者……れて、撤退し……!!」
「攻撃の手……緩め……な!!」
負傷者を連れて撤退しろ。攻撃の手を緩めるな。言葉の端々を聞き取ってつなぐ。状況は芳しくないようだ。
……と。荒木一等とともに、タクティカルベストを掴まれ何処かへ引きずられていく。
視界の端に映っていたのは、祠堂雛樹だった。まだ倒れていた自分たちを、安全な場所まで退避させるために移動しているのだろう。
来栖川准尉と荒木一等はコンテナ車に一番近い場所にいた。そのためダメージが大きく、まずは安全な場所へ退避させる必要があると判断した雛樹は茂みの中へ二人を連れて身を隠した。
「来栖川准尉、荒木一等、聞こえますか!」
「……ああ、聞こえているよ」
雛樹の呼びかけに、少し遅れながらも返答した来栖川。雛樹は荒木一等の意識も回復していることを確認し、言った。
「第三輸送部隊は今から負傷者を連れて撤退します……が、二脚機甲部隊の支援が必要なためコンテナを破棄し、火器管制塔に向かい粒子砲のシステムをダウンさせる必要があります。俺とガーネットがこの島に残り、今から集落へ向かいますが……」
「……私たちも行こう。集落へ一番近いのは我が部隊だ。だが、ドミネーターを放っておくわけには……」
「あれはドミネーターじゃない。起き上がれるなら見えますか? まだ触腕しか地面から顔を覗かせていませんが……」
荒木一等と、来栖川准尉は体を起こし、茂みからコンテナの方に視線を向けた。地面を突き破ってきたであろう無数の黒い触腕がコンテナを破壊し、何かを貪るように取っている。
「食料……? ドミネーターが人間の食料を何故……」
「あれはドミネーターではなく、グレアノイド侵食を受けた人間の成れの果てです。見た所、かなり変異が進んでいる個体の筈ですが……」
「しどぉ、あれもうちょっとで出てくるわよぉ」
「クソ……もう“食い終わった”か。……まだ撤退が終わっていないな。来栖川准尉、荒木一等、第二輸送部隊の増援が到着し次第、ここから集落まで走ります。いけますか?」
雛樹の呼びかけに二人は肯定の言葉を返した。そしてステイシスに釘を刺しておく必要がある。
「ガーネット、わかってるな?」
「んん、これしか使っちゃだめなんでしょぉ?」
隣にいるステイシスは、肩にかけた光学小銃を持ち上げるようにして雛樹に見せた。雛樹は首を縦に振り、それを見たステイシスは不満の声を漏らす。
「こんなの使わないほうが早いのにぃ」
「お前の戦闘は目立つからな」
「で、どっちに行けばいいのぉ? ここまっすぐぅ?」
「そうだ。もう少しで増援が到着する。あれには攻撃するな。矛先が向けば厄介だ」
「はぁい」