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第3節6部ーブリーフィングー

 だが、これが雛樹の身に降りかかる危険に対しての不安だけなら、ここまで悩み込むことはなかった。


“彼と再び会えることを心待ちにしていた自分でさえ、そばにはいられないというのに”


 このみっともない僻みはなんだ。


彼女ステイシスは見た目幼いながら、とても魅力的な女の子……雛樹が彼女に夢中になってしまうのでは”


 この言いようのない焦りはなんだ。自分の中で、ひどく暗く混濁した感情が溢れ出しそうだ。胸を焼くようなこの感情は今まで感じたことのなかったものであり、考えこめば考え込むほど深みにはまってしまっていた。


 センチュリオンノアへ来てから、決して少なくない人間と知り合い、仲良くなった。それは上司であったり、同僚であったり相棒であったり。

 その中にはもちろん異性もいた。憧れであったり羨望の眼差しを向けるに価する男性も何人もいた。

 しかし、このような気持ちを持つことは一切としてなかった。


三月みつき、高倉。これ以上邪魔しては結月少尉の邪魔になるからな。そろそろ我々の機体のメンテナンスも終わる頃だ。格納庫へ様子を見に行こう」

「そうですね、行くぞ高倉」

「あっ、はい! 結月少尉、またお会いしましょう!」


 気を遣ったらしい科戸瀬が、部下を引き連れて二脚機甲を格納してあるドッグへ向かった。彼らの制服の腕に取り付けられたワッペンには、小さなセンチュリオンテクノロジーの企業エンブレムと、CT—VaulxenDoleヴォルドールの文字が。センチュリオンテクノロジー製一世代型二脚機甲の名だ。現在市場に出回っている第三世代型二脚機甲より二世代前の旧型ではある。

 が、優秀な積載力とエネルギー効率による優れた継戦能力、低い機動力を補う堅牢な装甲を持つその機体は未だ根強い人気を誇っている。

 生産コストの安さ、そして市場に出回り切った型落ち機であるが故の入手のしやすさから、中小の軍事企業に好んで購入、またはレンタルされているロングセラー機だ。


 なるほど、センチュリオンテクノロジー製の機体に乗っているが故、強い憧れか羨望かは定かではないが、そのような感情が自分に向けられていたのかと静流は解釈した。


 立場上、彼らに見せて恥ずかしくない己であり続けなければ。そうやって、静流はある種の戒めを自分に課し、ようやくその暗い感情を隠すことができた……ように感じた。


……--。


 そして、場所は変わって制圧部隊後方海域、物資輸送艦隊ではすべての輸送艦、護衛艦を繋いだ通信用のモニターを使用し、ブリーフィングが行われていた。


 任務の詳細が話されはしたが、目的地の現在状況がわからない今、憶測での作戦予定が立てられつつある。輸送艦は全部で3隻、護衛艦4隻で構成された輸送艦隊は、各艦責任者を中心に概要を聞いていたのだが……第1護衛艦のGNC所属、RB軍曹は欠伸をしつつ、椅子に背をだらしなく預けた格好でそのブリーイング内容を右から左へ流していた。


「おい、しっかり聞いておけよRB。てめーまたそれで好き勝手やるんじゃねーだろな」

「Ifだらけの説明会聞いて何になるって?」

「……まあ、それもそうだけどよ」


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