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第1節2部ー始まりの欠陥機ー

「とにかくこれが、俺の乗る機体なんだな?」

「そう。その通りよ。本当は……動力部は完全に乗せ替えて使うつもりだったの。さすがにこの機体のものをそのまま使えなかったから」

「動力が死んでるのか。動かないんなら操縦もできないだろうしな」


 雛樹はその物言わぬ鉄の巨人に近づき、黒く変質した装甲部分に触れた。触れたところから電子回路を思わせる赤いラインが走っては消えていく。


「その機体の動力は死んでないわ。乗せ変える必要があったのは、その動力が人体を害するものだから。その必要がなくなったのは……」


 平気で黒く変質した、グレアノイド鉱部分を触る雛樹の手を指差して、葉月は言った。


「あなたがそういう体質だから」

「ああ、普通は触れないよな。こいつには」


 グレアノイドと言われる鉱石には、核燃料を軽く超えるエネルギーを持つ反面、強い侵食性がある。人体がそれに触れると、人としての細胞がその侵食性に抵抗した挙句、ほとんどは変質し鉱物化する。

 グレアノイドに耐性を持っていない人間なら、数日と待たず変質が身体中に進み死に至るのだ。

 下手に耐性を持っていると、さらに悲惨な結末を迎えることになる事例も確認されていた。


「その機体は、この海上都市が方舟と呼ばれる以前に製造されたものなの。動力部は、かつて核エネルギーを超える現状最高効率のエネルギー含有率を誇る鉱物……なんて言われてた時期よ」


 そんな時期を、自分は知らない。とにかく自分が生まれるよりずっと昔の話なんだろうが。


「今、流通している二脚機甲は、そのグレアノイドを精製して無害な物質に変えた、フォトンノイドエネルギーを装填して動力源としてるわ。これは、外部施設で精製したエネルギーを装填してるの。それに対して、特殊二脚機甲……ウィンバックアブソリューターは機体の内部でグレアノイドを精製し、フォトンノイドを自己供給させる機構を持っているわ」


 つまるところ、エネルギーの保有量が二脚機甲と特殊二脚機甲で違うのだ。その保有量が機体の性能差を決定づけている。


「でもこの機体は、まだグレアノイドエネルギー出力に関するアルゴリズムが解明されていないにも関わらず、対ドミネーター兵器として人類が生み出した欠陥品よ」


 機体内部でグレアノイドからエネルギーを抽出し、そのまま動力としているのが目の前にある壊れた機体らしい。


「その装甲がグレアノイド侵食を受けているのは、動力部から侵食が進んでるからよ」

「それにしては、本当に一部分だけだな……。相当古い機体なら、とっくの昔に侵食が終わってるだろ」

「その機体に使われてる装甲は、侵食耐性を持つ合金で作られてるから。対ドミネーター用にね」

「随分ちぐはぐな機体なんだな……」


 そんな欠陥試作機に乗っていたパイロットはどうなったのだろうか。コクピットに漏れ出るグレアノイドを少量ずつ吸い込み、内部から時間をかけて侵食を受けたという話もあるらしいが……。


「グレアノイド耐性がある俺にはうってつけの動力部ってわけだ」

「ええ、ステイシスの機体と同じくね……。ゴアグレア・デトネーター。彼女が乗るべくして作られた方舟最高性能の二脚機甲……。この機体の正統派生型よ」


 雛樹が海上都市へ来るまでに見た、凄まじいまでの破壊力を持つ黒い機体。

 その機体から出てきた褐色白髪の少女に、驚かされたことを思い出す。


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