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第6節最終部—因子での繋がり—

 雛樹は、その去り際の台詞のせいで葉月になんのことかと問われてしまった。

 いい加減話しておくべきだ。自分を雇っている人間にくらい理解してもらっていた方が助かるかもしれない。


 このままではちょうど時間も持て余していたところだ。少しばかり丁寧に話をしようと、雛樹は葉月へ己の体質のことを話したのだった。


「ドミネーター因子……ならあなたはステイシスと同じ……」

「なんかよくわからんけど、そういうことらしいな。だから俺はグレアノイド侵食を受けないみたいだ。グレアノイド鉱を粒子化して質量を持たせるって芸当もできる。ただ、これはやりすぎると人体部分が変異して、ドミネーター化するらしい。ある程度時間を置けば正常に戻るけど……」


 先ほどの結月恭弥の物言いから、変異したところが戻っていない器官があるようだ。因子の活性化が進み、人としての細胞が異形の物へと変異し、固定されているのか。


 実のところ、自分の体の何倍もある質量のドミネーターを蹴り飛ばすなどという芸当ができるのは、この変異が進んでいるから……ということが大きな要因となっているのだ。

 

「そう、そうなのね」

「随分冷静なもんだ。普通怖がったり、距離置いたりするんだけど」

「そんな失礼なこと、するもんですか」

「……おお、そうかい」

「と、いうか。そういうことは早めに言ってほしかったわ」

「悪かったよ。この体質については口外するなって言われててな」


 使えば使うほど雛樹の体は別の物へと変わっていく。そんな体質があってたまるかと、夜刀神葉月は歯噛みした。


「……とにかく、早く復帰して。あなたの医療費もバカにならないんだから」


 ふぅ、と。葉月はため息をついてベッドの上に座る雛樹にそう言った。

 今回の任務を終え、方舟中に話題として上がった無名PMC所属兵士。その宣伝効果は良くも悪くも大きなもののはずだ。

 取れる仕事も、彼という社員が増えたことで幅が広がっている。これから忙しくなる……かも。と、思慮を巡らせていた。


 そして、雛樹は晴れて退院することとなる。


 事前に場所を教えられた、指導雛樹が住むようにと“命じられた”住居。そこは、方舟の都市郊外にある丘陵地帯が広がる自然豊かな区画に建てられた、小さな家だった。


「なんでこんなところに住まわせられるんだ……?」


 終始、そんな疑問を口にしたり考えてたりしながら……あまりに未来的な都市部とは違うのどかな丘陵地の、舗装されていない道を歩く。

 空を見上げれば空を飛ぶ乗り物、丘の下を見ると、荷馬車がころころと転がっている。あまりにかけ離れた風景。

 そして、その丘陵地の高地に建てられた赤い屋根の家の前に立つ。


 シックな雰囲気を漂わせている家に似合わない、網膜認証、指紋認証からのカードキーという物々しいセキュリティを解除して扉を開き、石畳が敷かれた玄関口に入る……と。


 何者かの気配。


 人の気配には敏感な雛樹は、玄関から動かずじっと耳をすます。とたとたと人の足音がする。それは、吹き抜けの階段を降りてきて……。


「あ、しどぉ。なぁに、面白い顔ー」


 現れたのは、真っ白な長い髪に、真っ赤な瞳、褐色の肌の少女だった。


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