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第5節最終章ー慈悲のない決着ー


 撃ち抜かれるが、撃たれる場所くらいはせめて変えてもらおう。

 

 発砲。飛燕の持った自動拳銃、FiveSevenファイブセブンの銃口が火を噴いた。

 弾頭は雛樹に直撃。表面の衣服を突き破り、皮膚を爆ぜさせ、骨を傷つけ背面から抜けた。まるで水風船を割ったかのように、血液が吹き出した。

 だが、飛燕の表情は驚愕に歪む。


 着弾した弾頭は、心臓ではなく肩へ着弾したのだ。


 雛樹は引き金を引かれる直前、この潜水艦の揺れ、それに合わせて脱力した体を跳ねさせ、心臓を狙った照準を避けた。

 ファイブセブンの弾薬は小型ながらライフル弾と形状を同じくする。貫通力に特化し、ある程度の距離ならば防弾着を軽く抜ける性能を持つ。

 だが、マンストッピングパワー……いわゆる、撃たれた人間が撃ち倒されて行動不能になる力に劣る。

 雛樹が所有するガバメントの弾薬、45ACPは貫通力に乏しい代わりに人体を打ち倒す衝撃が凄まじい大口径弾頭だ。

 それほどの口径の弾頭を撃ち込まれていたのならば、壁に押し付けられ反撃の余地はなかっただろう。


 だが、今撃ち込まれた弾頭の衝撃はしれている。弾頭がうまく抜けてくれたことで前進できないほどの衝撃はなかった。痛みが良い気つけになり、意識もはっきりしている。


「ぁぁあアッ!!」

「ンっのやろォ!!!」


 爆ぜたように向かってきた雛樹。元から間合いは詰まっていた。だが……飛燕は銃を正確に構えたままだった。

 今度こそ目の前の兵士を殺すために引き金を引く。


 連続した三度の発砲。


 その三つの凶弾は雛樹を捉えた。だが、とっさに射線へ差し出した折れた左腕。

 その囮とも、身代わりとも言えるろくに使えない左腕が弾丸を受けたのだ。

 皮膚に、骨に、肉にドリルで穴を開けられたような感覚。抉られる痛み。


 だが、間合いは完全に詰めた。これ以上撃たせるものか。


 雛樹はまだ動く右手で飛燕が持つ拳銃を握る手を掴み、銃口を上に向けさせた。飛燕の言葉にならない叫び声と共に、狂ったようにその銃は火を噴いた。

 天井に無作為に着弾し続ける弾頭が火花をあげて落ちていく。


「……そこまで焦ったら終わりだな……」


 ひゅうひゅうと肩で息をする雛樹。そんな風前の灯を見せつけるこの男が、飛燕は恐ろしくてたまらなかった。

 雛樹は息を止め、ぐっと右腕に力を込めると、掴んだ飛燕の手首をへし折った。手から銃が離れ取り落とし、痛みと絶望を孕んだうめき声あげる。

 そのまま雛樹は手を引いて、飛燕をある場所まで引きずっていった。


 そこは、壁際……外れて絶たれたスチームパイプ。断面からは凄まじい熱を持った蒸気がまるでバーナーのように噴き出していた。


「やっ、やめろ……!! このクソガキ……よせよ!!」

「安心しろ。殺しはしないさ……」


 飛燕の首をひっつかみ、力任せにその蒸気へ……飛燕の顔を突っ込んだ

 

「がぁああああああああ!!!! うぁ、ばはぁぁ!!!」


 高温の蒸気が飛燕の顔面を焼く。顔の右半分の皮膚がただれ、損傷する。

 そのショックで飛燕の意識はぷっつりと途切れ、全身から力が抜け、まるで糸が切れた操り人形のようにその場で倒れこんだ。


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