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第5節8部—満身創痍の一撃—

 だが、目の前のドミネーターが乗り込むのを待ってくれるはずもない。こちらを向いた怪物の頭部が、気付けば眼前に迫っていた。だが……。


「がふっ……かっ、あま……り、調子に乗るなよ、あんた……」


 あらかた臓腑に溜まった血液は吐き出した。少しばかり垂れ流しすぎたが、血を抜いたことで、不意打ちを受けて荒れた判断力は元に戻っていた。

 仰向けに倒れていた雛樹だったが、腕をバネにしてぐっと溜めを作る。飛び起きるための動作だったが……曲げて縮めた脚を、突進してきたドミネーターに合わせた。


 弾けて伸びた雛樹の体、その脚がドミネーターの胴体を捉え、天井へ向けて打ち上げた。


 左腕に異様な痛みが走り、何か硬いものが折れたような音がした。


 おおよそ、向かってきたドミネーターの巨大な体躯を打ち上げられるようには見えない雛樹の体から繰り出された蹴り上げ。

 しかし、身体中が痛み、インパクトの直前で歯止めがかかってしまったために、天井まで蹴り上げるつもりだった怪物の体は少しばかり浮くだけにとどまった。

 耳障りな音が頭に響く。骨の軋む音、傷付いた内臓がねじれる音、筋肉が裂ける音。そんな音が、自分の体の内から発せられたように感じた。

 激痛を感じつつ、その蹴り上げの延長で飛び起きた雛樹はすぐさま腕を上げ、戦闘態勢に入ろうとした。しかし、左腕が上がらない。


 目だけを左腕に向けた。折れている。仕方ない、右腕だけだが……やれないこともない。


 間髪入れず向かってきた拳を、一歩退き右腕でさばく。次に向かってきた拳は蹴り足で迎え撃つ。

 止めた。怪物と比べてあまりにも矮小な人間の脚が、高速で突っ込んできたダンプカー並みの衝撃を持つ拳を止めたのだ。


「ぅうあッ」


 苦しげながらも、強い気合いがこもった叫びとともに押し返し、拳を蹴り弾く。床を蹴り、前方へ向かって跳躍、懐に飛び込み抉りこむような飛び蹴り。

 ドミネーターのその屈強な胴体が折れ曲がり、数歩後退させた。


「クソ、イラつく……。まったく力が乗らなねぇんだって……!!」


 数歩後退させただけでは、機体に乗り込む時間をその怪物は時間を与えてはくれない。

 それどころか、狂ったように攻撃を繰り返すドミネーターは隙を作ることすらなく……。


「うぶあッ……!!」


 振り回してきた拳が雛樹の上半身を捉えた。腰から上がポッキリと折れたのではないかというほど仰け反ったが、吹き飛ばされるどころか、その場から動くことはなかった。


 仰け反った上半身の前に出ている、力なく伸ばされた右腕。そこからワイヤーが伸び、ドミネーターの胴体へ刺さったアンカーへつながっていた。

 そのアンカーに固定され、吹っ飛ばされることなくその場へとどまったのだ。


 首が本来ありえない方向へ捻れていたが、左手で叩き戻した後、ワイヤーを巻きドミネーターへ肉薄した。


「グレアノイド変換……、再構成——……」


 右目が赤い光を帯び、ワイヤーを伝って赤いラインが伸びた。変換対象は、ドミネーターの胴に刺さったアンカー。

 赤い粒子と化したアンカーは、雛樹の右腕に収束。物質化したそれは、巨大なアンカーの形状をとっていた。



「少しの間大人しくするこった……!!」


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