制圧
氷面に激突した強化タングステン製のパイルの先端。
超高速で前進していたところにその衝撃が加わり、ベリオノイズは棒高跳びよろしく跳ね上がった。
跳ね上がるようにパイルを当てたのだ。
スラスターの挙動から、直進してくると読んでいたメガロマニアのレイルキャノンが一瞬前までベリオノイズがいた場所を通過する。
飛び上がったベリオノイズの装甲をギリギリ掠めながら。
掠めた装甲は赤熱し、融解する。
だが、レイルキャノンの一撃をギリギリ回避したベリオノイズはそのままメガロマニアに突貫した。
数千トンの質量が超高速で衝突する。
物質化光の障壁を張ったみたいだったが、ベリオノイズの勢いを多少殺せた程度で割れ……。
メガロマニアを巻き込んで、ベリオノイズは凍てついた湖面を転がった。
いや、転がったどころの話ではない。
メガロマニアを組み伏せるようにして氷を削り、引き摺っていく。
だが単に組み伏せただけではどうにもならない。
各可動部、関節部分に詰まらせるようにワイヤーを絡ませ、できる限り動きを阻害するよう拘束する。
拘束した上でベリオノイズの右腕部、先端に装備されたパイルバンカーの先端がガリガリと音を立てながらメガロマニアの正面装甲を這う。
そして、がちりと何かに引っかかり止まった。
そう、装甲の継ぎ目で止まったのだ。
機甲兵器である以上、複雑な駆動域、排熱機構、推進機構の兼ね合いで一何枚もの装甲を緻密に組み重ねたものになる。
となると必然的に装甲と装甲の間に大なり小なり継ぎ目ができ……脆弱性が生まれるのだ。
《しどぉ、やってぇ!!》
「強引で悪いな……!!」
近接兵器の中でも随一の威力を誇る炸薬射出式パイルバンカーがその装甲の継ぎ目から内部へ抉りこみ、メガロマニアの外部装甲及びコクピットを保護する内部装甲までをも吹き飛ばした。
吹き飛んだ装甲は大量の火花と共に凍りついた湖面に降り注ぐ。
装甲が破壊され、コクピットの内部が露出した。
ベリオノイズの肩に乗っていたガーネットはすぐさま露出したコクピットへ降り、それに続き雛樹もベリオノイズのハッチから外へ出る。
先に降りたガーネットは中の様子を確認しているようで……。
「抵抗は?」
「してこないわぁ。多分脳震盪かなにかで動けない筈ぅ」
雛樹はベリオノイズのコクピット内に備えられていた非常灯を持ち出していた。
明かりをつけ、そのコクピット内を照らし出す。
中にいるのは……。
「女か……」
「多分、あたしと同じ適合者ぁ。見て、髪の色素が抜けてきてて、肌の色もまばらだけど変わってるでしょお。本当に最近因子と結合した人間ねぇ。どうするのぉ?」
「引きずり出して拘束する。できる限りこいつの正体とこの機体の出所を探りたいからな……」
「じゃあちょっときつめに拘束しようかしらぁ。私と同じなら触れても平気でしょお」