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攻勢

 雛樹はそんなことを思いながらもガーネットに外にいても大丈夫なのかと問う。

 ガーネットはめちゃくちゃ寒いが死ぬようなほどではなく、移動時に振り落とされる可能性も否定した。


《しどぉ、いーい? あの子相手にあたしができるのはあくまでも防御面でのサポートだけぇ。攻撃面はぁ……》


「俺の役割だな。片方担ってくれて助かる」


《相棒なんでしょぉ。当たり前ぇ》


 うちの相棒は二脚機甲の防御ユニットの役割りを果たすのが当たり前らしい。

 雛樹はベリオノイズの右手に握った高周波アックスの感覚を操縦桿越しに感じながら、一度静止してメガロマニアと向き合った。


 《しどぉ、意識がはっきりしてるならここからよぉ。あの子があの場から動かないのは積載兵器の戦闘データ収集項目をこなしてるからの筈ぅ。高機動時のデータ収集に移られる前に仕留めるわよぉ》


「あいつ、やっぱり動けるのか」


《空戦機なんだから当然でしょお。全身のスラスター部分見なさいよぉ》


 雛樹はガーネットの警告を聞きながらベリオノイズの全身に仕込まれた各部武装の状態をHUDに表示させて確認する。

 先程の高機動回避により右脚部のパイルバンカーが歪んで格納不可状態になっている。

 飛び出たパイルのせいで多少かかとが浮いた状態ではあるが、この凍った湖面ではスパイクの役割りを果たしてくれそうだ。


  メガロマニアの腰からガトリングの銃身が引き、今度は幅広のレールが2対せり出し、肩部にあるユニットのゲートが次々に開いていく。


「あれなん……」


《追尾ミサイルとレイルキャノンよぉ! ミサイルは防ぐけどレイルキャノンの貫徹性能は私の防御壁でも何枚か重ねないと抜けるからぁ、回避よろしくぅ》


「解説ありがたい」


追尾性能を持つミサイルが防御可能ならば直線で向かってくるレイルキャノンをどう回避するか。

 ここで攻勢に転じる必要があるならば回避する方向は横でも上でもない。

 向かってくる電磁加速砲弾に対し、真正面から向かって回避する。

 槍などの長物を相手にした時のように回避しながら間合いを詰めるしかない。


 少しでも機体制御を誤れば被弾し、この機体は真っ二つにへし折られる。

 しかし攻め入るチャンスは今しかない。


《覚悟決まったぁ?》


「ん、出るぞ……!」


 背面スラスターを起動させる。

 ベリオノイズのスラスターが赤い火を噴いたのを確認したメガロマニアは向かってくることを察したのか、その場から後退しつつ無数のミサイルを打ち上げた。


 上空高くまで上がったミサイルはベリオノイズをロックし、噴煙の尾を引きながら凄まじい速さで向かってきた。

 ガーネットは向かってきたミサイルに対し自分の髪をグレアノイド物質化光に変えた防御壁を展開する。


(スラスターでこっちの動きが読まれるのなら……)


 レイルキャノンの照準はまっすぐ自分に向いている。

 スラスターの噴出炎でこちらの動きを悟られているのなら、スラスター操作で回避行動を起こすのは危険だ。

 読まれた先に弾頭をぶち込まれる可能性がある。

 ならば、スラスターの動きは一定して直進方向に全開で稼働させるしかない。


 ベリオノイズのコクピットに凄まじい加速Gがかかる。

 操縦桿を握るのもやっとな程の、加速に耐え、ただまっすぐさらに加速していく。


 前方のレイルキャノンが発射準備を整え、電光が砲身の先に迸る。


 けたたましいまでの被ロック音。

 そしてガーネットの防御壁へ着弾する無数のミサイル。


「んんん……ッ、数だけはすごいんだからぁ……!!」


 爆煙すらこの速度の中ではすぐに突き抜け、機体を隠すことなどできない。

 ここでスラスターを回避方向へ行くよう稼働させれば間違いなくその隙を狙って撃たれる。

 レイルキャノンの電光が収束し、今まさに撃たれようとした時。


 ベリオノイズの右脚部のパイルの先端が氷面を掠めた……。


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