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開戦


 ベリオノイズは投擲した高周波アックスを拾い上げ、敵の反応を探るべく動体探査レーダーを起動させた。

 コクピットの雛樹は白い息を吐きながら自分の鼻から滴ってきた血液を雑に拭う。

 内部の気温は5度に設定しているためひどく冷える。

 急激な加速による重力変化などの身体的負担が大きく、足からも血がにじむ。


 3体相手をしただけでもこの有様だ。

 ベリオノイズを感覚で操作できるようになり、技量は格段に上がったが弱った体がついていけていない。

 気温を低く保つことである程度失血は抑えてはいるが……。


《祠堂君、向かってきていたドミネーターは全て撃破したようだ。ドミネーターは、だが》


《ライアン機甲小隊長、前方6km地点で機械の駆動音》


 シエラ2、アーリヤ軍曹が落ち着いた声色で報告。

 雛樹もその気配はうっすらとだが感じ取っていた。

 数は1つではなく、複数。


《識別信号解読不可、味方機ではないな……各員戦闘態勢継続。先ほどの戦闘行動で相手からすでに捕捉されていると見ていいな。遮蔽物があるなら身を隠し、次の戦闘に備えろ》


《シエラ2了解》

《シエラ3了解》


《祠堂君、連戦になるが大丈夫かい?》


 雛樹は針葉樹が密集している場所にベリオノイズを潜ませながら気配を探っていたのだが……。

 おかしい。

 気配は明らかに複数あるのだが、その気配がひとかたまりのまま動かないのだ。


 複数の機体が固まって警戒体勢を整えているのならわかるが……あまりに距離が近すぎる。

 この気配の収束感はそれこそ団子状になっていないとおかしいほどだ。


《シエラ1より各機へ。前方の機体を囲むように展開する。私とシドウ君で右方に君達は左方から回り込んでくれ……》


「祠堂雛樹よりライアン少尉へ。相手の気配がおかしい。一度退いて基地まで戻ったほうがいいと思う」


《こちらライアン。気配? 随分と曖昧な判断基準だが根拠があるのかい?》


「大体こういう時は攻めて痛い目を見る。開けた場所に出たほうがいい。退かなくても……そうだな、北東にあるでかい湖ならいいかもしれない」


 ベリオノイズは身を隠しながら後方に控えているアルデバラン、ライアン機へ向かって湖の方向を人差し指でちょいちょいと指し示す。

 アルデバランの青い双眸はその指し示された方向に向けられ……。


《そうだね、データも何もない相手かもしれない。この見通しの悪い場所では撹乱される可能性もある。地の利は取られているだろうし、湖側へ移動するか》


 雛樹が示した湖は北東8kmほど先にある巨大な湖だった。

 この気温である、随分と分厚い氷が張っているに違いない。

 二脚機甲の重量に耐えられるかどうかはわからないため本来は基地まで下がりたかったが……。


「……消えた!!」


《各員索敵範囲を広げ、再捕捉を試みろ!!》


 雛樹が感じていた気配が消えた。

 アルデバラン各機がレーダーで捉えていた機影が消えた。


 一瞬にして感知範囲の外へ出たのか、もしくは未知のアンチレーダーシステムを起動させたのか。

 いや、感知範囲の外へ出たのだ。

 そもそも雛樹はレーダーで機影を確認していたわけではない。


 ベリオノイズは針葉樹の影から出て貸し与えられたカービンライフルの銃口を上げて前方、右、左とクリアリングし構えた。

 アルデバラン3機も各自携行兵器を構え、レーダーシステムの感知範囲を限界まで広げて再度機影を補足しようとした。


 だがそれは悪手だった。


 直上から……凄まじく巨大な赤い光が周囲の空間さえ歪むほどの重圧を持って降り注ぐ。



 

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