人工作成物
「随分回りくどい変異の仕方だな」
「自分じゃ大した力を持たないから寄生した人間の細胞を使って増えてるみたいよぉ。侵食対象も抑えられてるみたいだしぃ、いかにも人工的に作られたって感じぃ」
侵食対象。
グレアノイドは無機質有機質問わず耐食性が低い大陸やその他生物を侵食していく。
だがガーネットが保有しているドミネーター因子による侵食は生物などに限定されており、着用している服などに侵食反応は発生しない。
逆に雛樹の保有するドミネーター因子による侵食は生物、人体には現れず自分の意思でコントロールすることで無機質を侵食する。
グレアノイドやドミネーター因子単体ではそのような侵食対象を抑える事は不可能だが、人間などの生物、その他遺伝子情報を書き換えることである一定のコントロールをすることが可能である。
そもそもステイシス=アルマは生み出される段階で自らのドミネーター因子によるその他物質への侵食反応を起こさせない設計を想定されていた。
だが、凄まじい回数の実験、検証、薬物投与を繰り返してもも生物に対する侵食反応を止めることができなかった。
「こいつら……活動止める気配がないぞ」
「すっごい頑張って粉々にし続けたら溶けて消えるぅ。核が無いから細胞の分裂と肥大ができないようになるまで壊し続けるしかないかもぉ」
「嘘だろ……」
動きが緩慢で攻撃もさほど苛烈なものはなく、捌きやすいのはいいがそれほどの再生力を持っていると単純に面倒だ。
グレアノイドによる汚染を受け付けないガーネットと雛樹だからいいが、他の人類にしてみれば厄介なことこの上ない。
ライフル弾でも着弾した部分に大穴が開くもののすぐに塞がってしまうため有効ではない。
全身、かつ一瞬にして爆発的な威力を出せるものと言えば……。
「ガーネット、ベリオノイズを起動させてくる。ここで抑えててくれ!」
「ん、りょおかぁい」
目の前の寄生型ドミネーターに数発撃ち込んで後退させてから、雛樹は後方にあるベリオノイズの元へ走った。
ここは格納庫だ。
二脚機甲を格納する場所だけあってある程度の広さは確保されてるものの、それを使用して戦闘をするにはあまりにも不向きだ。
二脚機甲専用の大砲のような超大口径弾薬でも撃とうものなら格納庫自体倒壊してしまう恐れがある。
なので、使用するのは機甲兵器の携行武器ではない。
雛樹はベリオノイズの装甲を伝って駆け上がり、ハッチを解放してするりとコクピットに滑り込む。
手際よくシステムを立ち上げるとすぐに行動可能なまでになった。
膝をついた状態で待機していたベリオノイズメインカメラに赤い光が灯り、各部関節に油圧がかかる音を出しながら駆動し、立ち上がった。
「よし……スラスターエラー無し。使えるな」
先ほど修理したばかりの前面部スラスターに火を入れる。
問題なく作動し、スラスターの推進力により機体が少々後方に退いた。