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襲撃


「痛むか?」


「かなり痛みますが、幸い動きます。ありがとうございます……あのままだと腕を切り落とさなければならないところでした。その力は……」


「それよりさっきのはなんだったんだ、ライアン准尉。ドミネーターか?」


 ガーネットが腕を切った途端、その黒い軟体生物はどこかへ行ってしまったのだ。

 一瞬だったが視界の端に捉えた姿は人の形をした黒いスライム状のようなものとしか形容できないものだった。


「先ほどここの技術者に危害を加えていた不審人物を制圧したのですが……、あれは……なんというかおかしいことを言うようですがその……」


「落ち着いて話してくれて構わない。ガーネット! さっき逃げたの追えるか?」


「おっまかせぇ」


 気配が微弱すぎて雛樹では追えない。追跡可能なのはこの中でガーネットだけだ。

 雛樹の指示を受けてすぐにガーネットは気配を掴み、その場から消えるがごとく追跡を開始する。


「倒れた男の体にどこから現れたのか、スライム状の黒い塊が群がったんです。瞬きをする間にそれは増殖し男の体を飲み込み人の形をとった……」


「……で、さっきの奴か」


 黒い軟体状のドミネーター等聞いたことがない。

 少なくとも本土にいた頃にすら見たことがない。

 だがあのスライム状の体には赤い目玉のような器官が数個、見え隠れしていた。

 間違いなくドミネーターではありそうなのだが……。



 殺気。


 今こうしている自分たちに数人が銃口を向けている……感覚。

 ロシア兵か? 違う。

 彼らなら遮蔽物に身を隠しながら自分たちを囲むように展開したりはしない。

 これは自分たちを確実に敵とみなした上での動きだ。


 間違いなく、その不審者の仲間だろう。


 雛樹と……そしてライアン准尉はあくまでその殺気に気づかない振りをし、不審な動きをしないよう小声で言葉をかわす。


「前方、あのシャッターから右方にかけて居ます」


「確かに。……後ろの柱に飛び込むぞ!!」


 息を大きく吸い混みライアンの腕を強く引いて後方の柱の影に飛び込んだ。


 不審人物の仲間と思わしき者たちからの銃撃が間髪入れずに始まり、自分たちの後方に次々と着弾する弾丸と金属の床から弾ける火花。

 それらを全て置き去りにして柱の後ろに滑り込んだ二人は一旦息をつく。


「しどぉーッ!?」


 突然始まった銃撃の音に気づき、この格納庫の東側扉まで戻ってきたガーネットは雛樹の名を叫ぶが……。


「大丈夫だ! お前はあれを追ってくれ!」


 雛樹は凄まじい火線が迫る柱から少しだけ手を出して追えとジャスチャーをする。

 するとガーネットはそれを理解し踵を返す。

 

 雛樹は銃火器、刃物の一切合切全て取り上げられている。

 丸腰であれだけの銃撃をどうするつもりなのか……。

 いや、大丈夫だ。しどぉが大丈夫と言ったのだから大丈夫。

 いい加減学習しなければならない。私は雛樹の言うことを聞かなくちゃならないし、信じなければならない。

 あたしはしどぉの兵器……相棒なのだから。


 ぐっと下唇を噛み締め、ガーネットは追う。あの謎の形状をするドミネーターを。


「予備の銃はあるか?」


「ありません。アルデバラン……いえ、機甲兵器エグゾから降りた時にこれしか持ってこなくて」


 ライアン准尉はそう言って50口径の拳銃を雛樹に見せた。


「デザートイーグルか。実用性に乏しいがあんたの体格ならまともに扱えるみたいだな。残弾数は?」


「チャンバーに1、マガジンに2。予備弾倉は一つ……うおっ!」


 至近弾。

 割れた弾頭がライアンの頬を掠った。


「さ、幸い利き腕は万全に動きます。俺が前に出て奴らの注意を引くので貴方は……」


「いや、俺が前に出て奴らの首を取る。柱の陰からその怪物銃で正面の奴らに牽制を掛けてくれ」


「はぁ!? 何を言って……丸腰でこの中を突っ切るつもりですか!?」


「大丈夫。堂々としてれば以外と当たらないもんだ。対人相手は度胸。思い切りが大事だって習わなかったか?」


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