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異常事態



微弱な……本当に微弱なドミネーター反応を感知した。

起きていた時には一切感じなかったレベルの反応だ。


ガーネットはすぐさま目を開け上半身を起こした。


「どうした?」

(うわ、よだれでべったべた)


「あの子達の気配がしたぁ……」


 雛樹は霞む目を擦ることもせず、所持していたはずのガバメントを探したが今はロシア軍に取り上げられているため無いのを思い出す。


「1体か?」


「うぅ、気配が小さすぎてよくわからないわよぅ」


「確かに……俺は何も感じないしな。本当にいるのか?」


「いるぅ。でもこんな気配初めてかもぉ」


「外に出て確認する必要がありそうだな。一緒に来るか?」


「いくぅ」


 随分と自信なさげな彼女だったが、実際のところ本当に小さく不明瞭な気配なのだろう。

 それだけ小さな気配ならば脅威度は低いと思われるが……。

 

 ガーネットと雛樹はジャケットを羽織り、丸腰でハッチを開けて外に飛び出した。

 

 肌を刺すような冷気、細く吐き出す息が白くなる。

 辺りを見回していると、重い銃声が数発聞こえた。


「しどぉあっちからぁ!」


「了解!」


 銃声が聞こえた方へ走る。

 ガーネットの方が早く、跳ぶようにして銃声の元へ接近。

 

「ぐっ……この化け物め!!」


 到着したガーネットが見たのは漆黒のグレアノイド物質に腕を絡め取られていた兵士の姿だった。

 

 マズイ。

 即座に事の重大さを悟ったガーネットはそのグレアノイド物質を断ち、素手で引っ掴むとその白人兵士から引き剥がした。


「ぐ……き、君は……!?」


「グレアノイド侵食が始まってるぅ……」


 白人兵士の腕がグレアノイドによる侵食を受け、黒く変色していた。

 このままだと全身が汚染され死に至る。

 

「クソ……腕を落とすしか無い」


「まだ皮下組織に達してないから大丈夫ぅ。侵食度が低くて助かったわねぇ」


「なんだって?」


 雛樹がその場に到着してすぐ、ガーネットは彼の侵食部分を粒子変換するように頼んだ。


「所属と名は?」


「センチュリオンテクノロジー所属、ジョージライアン、階級は准尉。手を煩わせてすまない……君は?」


「夜刀神民間軍事会社、祠堂雛樹。階級無しだ。侵食部分を削ぐぞ、目を閉じて歯を食いしばっててくれ」

 

「あ、ああ……わかった……一気にやってくれ」


 グレアノイド侵食された皮膚を削ぐ。

 表向きはそう言ってはいたが、実際は雛樹のドミネーター因子の能力でグレアノイド化した皮膚組織を根こそぎ精製、粒子化することで取り除く。


 削ぐのと変わらないがこうすることで侵食部分を全て取り除くことができる。

 人体などを侵す生体侵食ならガーネットの方が扱いが得意であるが、ガーネットが触れた時点で侵食速度が何倍にも上がるため危険なのだ。


「しどぉ、慎重にぃ」


「わかってる」


 雛樹はライアン准尉の腕の侵食部に触れ、集中する。

 無機質な石などをグレアノイドに変換する時の要領で腕の侵食部分を分解精製し、すべて赤く光る粒子に変えた。


 細心の注意を払い、全ての侵食部位を分解できた頃にはライアンの腕からは決して少なくはない量の血液が滲み出ていた。

 ひどく痛むらしく呻き声をあげていたが……。


 止血のための布が必要だったが、運の悪いことに都合のいい布がない。

 雛樹が自分の着ているものを破ろうとしたが、ガーネットがごそごそと自分の懐を弄ったかと思うと黒く多少長さのある布切れを出してきた。


「これどぉ?」


「……まあ、なりふり構ってられないか」


 雛樹はガーネットから受け取ったその布をライアン准尉の腕に強く巻きつけて止血に使用した。



  



 

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