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28話ー説教される最高戦力ー

「ぅう゛ーーーーーっ……」


二回目のゲンコツを受けたガーネットは殴られた箇所を両手で押さえてその場でうずくまり……。


「が……がんばって……ちゃんと手加減もしたの゛にぃーーーー……!」


 我慢して溜めていた涙をぼろぼろとこぼしてしまっていた。

 叱って初めて泣かせてしまったがしかたない。

 手加減をしたと言ってはいるが兵士の腕を棒菓子のように折り、顎を角砂糖のように砕いているのだ。

 

 確かに彼女にとっては最大限の手加減をした上での事なのだろうが普通の人間の物差しを当てはめるとそれはオーバーダメージと言う他ない。


 運び込まれた兵士の中には軽度PTSDの症状が見られる者もいるくらいなのだ。


 最近の傾向ならすぐに反省して謝ろうとする彼女だが、今回は雛樹のためにやったことという自負が強いためなかなか謝ろうとしない。

 というか頭の上に大量のクエスチョンマークが浮かんでいるのが可視化され見えているようだ。


 〝なんで? なんであたしこんな怒られてるのぉ?〟


 そんな心の声も聞こえてくるようだ。


 現在の状態だが雛樹自身、落ち着いてはいるようでまだ安心できる状況ではない。

 拘束され連れ込まれたのはロシア軍前線基地内の拘置所。

 コンクリートと鋼鉄製の檻で固められたそこの壁には清掃しきれなかった血液の跡がそこかしこに見られるほど殺伐とした雰囲気を漂わせている。


 結月静流とともに葉月も来ているとのことなので、おそらく現在この基地のお偉方と話し合いの場を設けているのだろう。


 何を話し合っているかは……まあ、大体の予想がつくが。


 しばらく檻の中で待機していると2人の兵士が来て檻の鍵を開けた。


『出ろ』


 もちろん雛樹にロシア語がわかるはずもなかったが、身振り手振りでなんとなく何を言っているのかはわかった。

 雛樹はまだべそをかいているガーネットを連れて檻を出てその二人の兵士の後をついていくことになった。



『なに泣いてんだこの女』


『泣きたいのはこっちのほうだぜ。親友が顎を整形されちまったんだから』


 前を行く兵士二人がなにやらロシア語で話しているが雛樹には何を言っているかわからない。

 ガーネットにはまる聞こえなわけだが……。


『本当にこのチビがやったのか? 男の方じゃないのか』


『知るか。話に聞いたのはこいつだろ……見た目に反してなにするかわからんぞ』


 前を行く二人の兵士は同じタイミングで肩越しに後方を確認する。

 するとゾッと背筋に悪寒が走った。

 泣きべそをかいていた少女が凄まじく冷たい目でこちらを睨みつけ……。


『あたし、今機嫌すごく悪いんだけどぉ……。貴方も整形しとくぅ?』


 流暢なロシア語でそんなことを言われた兵士二人は肩をすくめて遠慮しておくよと言い返す。

 そしてそのあと前に向き直りこそこそと……、


『おい誰だよ島国育ちは島国言葉しかわからねって言ったのは。ネイティブスピーカー並じゃねーか……』


 そんなことを話していた。

 雛樹も突然ロシア語っぽい言語を話し出したガーネットに驚き目を丸くしていたが……。


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