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12話ー彼へのー



こんな話をしてはいるが、本来ならばエリスやノックノックもΔ級ドミネーターの話を聞きたいはずなのだ。

実際、その話をいつ切り出そうかタイミングをお互い計ってすらいたくらいだ。


しかし静流が普段あまり見せない疲れた様子に仕事の話を持ち出さないでいた。

身体的に疲れているだけならばいいのだが、どうやら精神的にも随分弱っている様子である。


仕事に対しては心配するほどストイックで冷静な彼女がだ。

気を遣いもするだろう。


「なんや結月ちゃん、えらい元気ないみたいやな。今回の結果に満足いかんかったんか?」


「あ、いえ……気を遣わせてしまいましたか。申し訳ありません、そんなつもりはなかったのですが」


今回のΔ級遭遇戦はあまりに突然なことだった。

後続部隊とも満足に連携が取れない状況で自分が行える最善の行動をしたつもりだ。

そこに対して不満足など言うはずもない。


ただひとつだけ……憧れの人がとにかく心配で心配でサンドイッチも喉を通らないだけだ。


正直こんな極地にサードパーティ製の格安パーツばかりで継ぎ接いだオンボロの機体で乗り込むこと自体が自殺行為なのだ。


例えるならば……そう、他の部隊が最新鋭ステルス機で万全を期している中一人だけ複葉レシプロ機で乗り込んできたような。


いくら昔からの憧れの人間だと言っても、場違いな装備で鉄火場に現れたとなれば心配もする。

その上、自らΔ級の殺戮範囲内に飛び込んで行くようなことがあれば。


あの時は任務途中で緊急事態に対応しなければならなかったため、必死に自分を押し殺し冷静に撤退支援を行っていたが……。


本来ならば大声を上げて雛樹を叱っていたところだ。


……と必死に思い込もうとしていた。


「あれ、随分楽しそうじゃない? ノックノックちゃんたち」


「お、東雲はん」


「ひめのん休んどらんで大丈夫なん? 相当疲れとるって聞いとったんやよ」


「全然大丈夫だよ。この後またシステムメンテあるし本格的に休むのはそれが終わってからかな。で、なに? うちのアイドルが元気ないってー?」


 シャワーを浴びてきて少々濡れた髪をまとめることなくおろした東雲姫乃がにやにやしながらカフェの席に着いた。


「なんでもないですからあまり詮索しないでくれます?」


 静流はそう言ってサンドイッチをむすりとした表情で頬張った。

 東雲姫乃は結月静流のことをよく知っている。

 センチュリオンテクノロジーに入社してからこっち、ずっとバディを組んでいる相手なのだ。


「ふふん」


「……なんですか」


何でもかんでも見透かしたような目でこちらを見てくる姫乃に静流は片肘をついて右手で目の辺りを覆い……。


「……男子禁制」


「はいはい兄ぃやんは退場! しっしっ」


静流のその言葉に反応したエリスが兄であるアインスノックノックの肩を押して席から追い出す。


「ええっ、そんな殺生な! せっかく皆が羨む空間に入り込んでられると思っとったのに!」


「あっちで嫉妬の目を向けてくる男たちに揉まれきぃや」


ノックノックがふと後ろを振り返ると男性二脚機甲搭乗者のグループが剣呑な目つきで自分を睨みつけてきていたのに気がついた。

気さくに手を振ってやると、皆同様に早くこっちへ来いと手招きした。

“いつまで結月さんの隣にいるつもりだこのエセ関西弁野郎”

そんな声が聞こえた気がして口をへの字に曲げた。


  



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