11話ー性能差ー
自律駆動する兵器を搭載していないコバルトスケイルの方が性能としては劣る……ように聞こえるが実際はそうではない。
センチュリオンテクノロジー社は企業連合傘下では無いがゆえにこの海上都市において幾らかの制限を課せられている。
その制限の一つはウィンバックアブソリューターの保有制限。
企業連傘下であるGNCが軍部にて所有できるウィンバックアブソリューターが最大5機であるのに対し、センチュリオンテクノロジーは2機しか認められていない。
それは企業連合内での技術共有の義務などが強制されないが故、度を超えた秘匿技術を持たせないためであると言われている。
ウィンバックアブソリューターには企業の最先端技術を惜しみなく反映させられており、その1機1機には小さな国なら買えてしまうほどの価値があるのだ。
その所有限界2機のという規定の中でセンチュリオンテクノロジーはコンセプトが全く違う機体を各々別のチームを設立し開発させた。
大まかに言うと中距離兵器を搭載し対多数を得意とする機体の開発計画と近距離、遠距離兵器を搭載し対少数、もしくは単体を目標とした特殊二脚機甲をコンセプトに開発計画を立てた。
その結果開発されたのが自律操作型フォトンノイド兵器ムラクモを主兵装にした特殊二脚機甲ブルーグラディウス。
そして耐グレアノイド合金製超重量ブレードと再圧縮環粒子狙撃砲を主兵装にした特殊二脚機甲コバルトスケイルであった。
「兄貴は今回も全く役に立たんかったんやねー」
「今回も言うな。今回も言うなやおい勘弁したれやそこは」
「Δ級に対する有効打を撃てる重要機体ですからね。VIP扱いですし仕方ありませんよ」
α級からγ級の殲滅を主に想定されているブルーグラディウスとは違い、コバルトスケイルはγ級以上の単体で現れやすくかつ強固な装甲を持つドミネーターとの戦闘を想定されている。
そのためすでに作戦行動をしていた静流とは違い、最終目標地点と設定されていた場所までコバルトスケイルは空輸されることとなっておりノックノックの活躍の場がなかったのだ。
「結月ちゃんの方が活躍の場多いからええなあ……」
「そんなこと言わないでください。純粋な実力なら貴方は同私と同等かそれ以上の腕でしょう?」
「ええねん、実際人気は結月ちゃんの方が上やし。見てこれ最新号の見開き」
「うっ……!! こんなところでそんなもの開くのやめて欲しいのですが!」
どこから出してきたのかノックノックは隔週刊行のミリタリー雑誌の見開きを立体モニターに映して見せてきた。
そこには体のラインがくっきり出る上肌の露出が多いパイロットスーツを着た静流がブルーグラディウスのハッチから出てくるところがでかでかと写っている。
「ほんま結月さん綺麗やわ。この腰のくびれ方羨ましすぎるんやけど」
エリスもその写真を見ていたらしく目を輝かせてその見開きに見とれているようだ。




