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5話ー援護ー



……。



時速80km。

撤退路を進むのはいいが速度が足りない。

2機分の面積で深く積もった雪をかき分けているせいかかなり減速してしまっている。


いくら2機分のスラスターで前進しているとはいえ、撤退路が狭まる方が早い。

このままでは再び囲まれ攻撃を受けるが……。


《こちらセンチュリオンテクノロジー所属結月静流。聴こえますか、ヘリックスモーリス部隊所属機》


少しばかりのノイズ音の後はっきりした女性の声が聞こえてきた。

この状況でも限りなく冷静で、かつ力強い発声だ。


「……!! こちらヘリックスモーリス社所属アレックス上等兵。聴こえています、結月少尉!」


戦闘用に範囲を狭めていたレーダーを索敵用に広域範囲へシフトさせた。

すると上空3000メートル付近にウィンバックアブソリューター独特のフォトンノイド反応が見て取れた。


《了解。上空から機影を捕捉しました。これよりブルーグラディウスは貴殿らの撤退を援護します。どうぞそのまま後退を》


その通信が途絶えた直後、撤退している自分たちの周囲に青白い閃光が数本着弾し複数のドミネーターを貫く。

収束させた高密度フォトンノイド粒子砲の一撃はドミネーターの体を完全に貫き、雪原に着弾し青の粒子をドーム状に放出した。


その粒子拡散を避けるように周囲のドミネーターは蜘蛛の子を散らすかのごとく退き……。


「助かった……まさかあの結月少尉が救助に来てくれるなんてな。今のはかの有名なムラクモか」


《気を抜くな! また来るぞ!!》


「分かってる!」


強力な攻撃を受けたことに対し興奮したのか周囲のドミネーターの動きが活発化しだした。

だがα級β級程度の体表硬度と核の数に対してはウィンバックアブソリューターの敵ではない。

そもそもがγ級、Δ級との戦闘を想定して設計されたものなのだから下級ドミネーター相手ならば苦戦することはない。


4基のムラクモが撤退する2機の二脚機甲の周りに配置され、フォトンノイド粒子砲及び持続射出型レーザーで継続的にドミネーターを破壊してゆく。


……。


「フォートレス……この規模のドミネーターは久しぶりに見たな」


その1体が存在するだけで国が滅びかねないとも言われるそのドミネーターは、本土ではフォートレスと呼んでいた。

吹雪の向こうにかすかに見える巨大な黒き山といくつもの赤い光。

核爆弾ですら破壊できないその巨躯は見掛け倒しでないことを雛樹自身よく知っている。


異形体と違い肥大化した不安定なものではなく、完成された純粋な怪物。


だが今はそれに気を取られている場合ではない。

真正面から自爆特攻を仕掛けてきたα級に気づき、ベリオノイズの腰部左右両側に装備した兵装を起動する。


専用の弾薬を用いて凄まじい威力で射出されたのは登山に使用されるハーケンのような器具。

そのハーケンにはタングステンと耐グレアノイド合金を高密度に縒り合わせた強固なワイヤーが繋がっている。


自爆しようと突っ込んできたドミネーターに直撃し、群れに押し戻したところで爆発。

その爆発は周囲の仲間のドミネーターを巻き込んだ。


先日の任務で夜刀神PMCが得た報酬をほとんど全てつぎ込んで購入したその装備はセンチュリオンテクノロジー製のハーケン射出装置。

腰の両側と両腕手首にそれぞれ1基ずつ備えられたそれは本来飛行能力のない二脚機甲が壁などの障害物を乗り越えたり登ったりするために使用する装備なのだが、雛樹はその装備の使用方法を熟知しているがため本来のそれとは少々異なっている。


強力なモーターでもって凄まじいトルクで巻き上げられたワイヤーはハーケンを元の射出装置まで戻らせた。

戻った際の衝撃で機体が少々ノックバックし、射出口から火花が散る。


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