表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/307

74話ー説教ー



事務所に戻り、メインイベントがやってきた。

ガーネットへの説教である。


ガーネットは嫌われたくない一心で雛樹にしがみついてこようとしたが雛樹はそれを拒否し、ソファーに座らせ、自分たちはその向かいに座って今回のガーネットの単独行動についてだめだったところとしなければならないことを、怒鳴ることなく諭すように柔らかな口調で伝えた。


ガーネットはそれを手近にあったクッションを抱き込んで口元を隠し、涙を目一杯にためてしゅんと大人しく聞いていた。


実のところ、怒られるというのはガーネットにとって初めてのことではなかった。

実験や研究を繰り返し行われる中で、ほとんど罵詈雑言とも言える言葉を研究者達からぶつけられていたのだから。

すぐに制御不能になる不完全で危険な生物兵器相手だ。仕方ないこともあったが……。


その罵詈雑言を言う研究者たちの目には例外なく自分への嫌悪感が見て取れた。


「祠堂君、これくらいにしてあげましょう。反省しているみたいだし……」


「……反省してるのか?」


「ぅん……」


「ん、じゃあ言いたいことはこれくらいだから。腹減ったろ。何か食いに行くか?」


「行くぅ」


雛樹と葉月の説教を受けてみて分かったが、彼らの怒り方や態度から一切として嫌悪感が感じ取れなかった。

本当にじぶんのことを心配しているからこその説教。嫌われるという言葉からは程遠い怒られ方だった。


「社長も行くか?」


「私はもう少し仕事が残ってるから遠慮しておくわ。あ、今回使った散弾銃とか出してもらえる? あれレンタル品だから返さないと……」


「あ……あれ海水に浸かったから手入れしてから返す」


「そうね、そうしてくれると助かるわ。……壊してないわよね?」


「大丈夫。かなり深いところの海水だったし錆びて使えなくなるなんてことはない筈だ……多分」


「多分って、勘弁してよ。買取になったらそこそこ高いんだから」


デスクに座って端末を立ち上げ、立体モニターとにらめっこを始める葉月は最後にお疲れ様、今回もいい仕事してくれてありがとうと丁寧に言ってきた。


それを聞きながら雛樹とガーネットはすっかり暗くなった外に出て……。


「……」


すっかりしおらしくなったガーネットの頭をぽんぽんと優しく叩き……。


「どこ行こうか」


「しどぉが作ったご飯がいい……」


「いや……多くはないけど金も入ったし疲れたし、何か食べに……」


「あたしも手伝うからぁ」


「ええ……お前皿の数減らす事しかできないだろ」


「……」


「う……仕方ないな。分かったからあんまりしがみついてくるな。買い物いくか」


ガーネットが腕しがみついてきているが正直その力は関節がおかしな方向にひん曲がりそうなくらい強い。

怒った手前、あまり邪険にはできないがこの無言の訴えは正直勘弁してほしい……。


結局この日は雛樹の作る味が濃すぎるカレーになった。


まだまだ料理はあまり上手くない雛樹だったが、ガーネットにとって一番落ち着く夕食の席ではあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ