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64話ー深海機動ー

 核が複数あり、それを一度に破壊できない以上一つ一つ破壊する必要がある。

 その核のひとつひとつをあの肥大化した体から見つけ出すのは容易なことではない。


 普通の人間であるならば。


「しどぉ、そのまま真っ直ぐぅ」


「あいよ」


 スラスターから放出されるグレアノイド粒子と泡の軌跡を残しつつ大きな弧を描くようにして接近。

 数々の触腕を回避しながらさらに加速し、真正面から異形体のアメーバのような体躯に右腕を突き出しながら突っ込んだ。


 肥大化したその体躯を突き抜けると、血管のような黒い管を引きずり出しながら、赤々とした宝石のような塊をその右手で掴んでいた。


 人間でいう心臓。ドミネーターの原動核。


 体躯と違い凄まじい硬度を誇るその赤い塊を少しばかり投げ、パイルバンカーの先を当てて砕く。


 核にまとわりついていた黒い血管のようなものが引きちぎれ、海中に漂う。

 砕けた核は赤い粒子となって消えていく……。


「上手ぅ」


「至近距離まで近づけば俺も核の位置はわかるからな」


 ドミネーター因子を持つガーネットは多少離れていてもドミネーターの急所が判別できる。

 離れているとわからないが接近すれば雛樹も同じように核の場所を知覚することができる。


 出来損ないのドミネーターにとってこの二人を一度に相手することはあまり に無謀。

 出来損ないにとっては……だが。

 通常のドミネーター、及び6年後の世界から来たドミネーターとなった人間がどれだけ完成されており、強力なものか再確認させられる。




核をひとつ失い、肥大化し続けていた異形体の体躯が端からばらばらと崩れていく。

 だが完全に崩壊させることはできない。あと数個、核が残っている。


「しどぉすごく上手になってるぅ」


師匠ターシャが凄まじくスパルタだからな……あと海中の方が動かしやすい」


 雛樹の二脚機甲操縦技術はガーネットが言うように目に見えて上手くなっている。

 海中の方が動かしやすいというのも他の機体と比べて出力の大きいスラスターを装備しているからだろう。

 強すぎて海上で使用すると機体が損傷するほどのスラスターであっても海中では水圧によってある程度マイルドな出力に強制的に抑えられるため制御しやすくなるのだ。


 それでもフル出力で扱えば水の抵抗で機体がバラバラになりかねないのだが。

 実際、先ほどの機動で機体バランスの調整用パーツ、スタビライザーが幾つか装甲の一部ごと弾け飛んでいる。


「次、まとめていけるわよぉ」


「ああ、終わらせよう」


 ドミネーター因子を含んだあの薬ひとつでここまでの化け物を生み出す。

 その研究を本土が進めているという事実は正直受け入れがたいものだ。

 そして今回、6年後の彼らを奪われたことでどのような悲劇が引き起こされるのか……今の雛樹やガーネットでさえ、予想はつかないでいた。




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