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63話ー大海溝の実態ー

 大海溝。

 すべての始まりにして世界を変革した現象。


 その巨大な溝の中に深く深く沈んでいく。


 本土でCTK201としてドミネーターを相手にしてきていた雛樹にとってもここまで深く海溝に入り込んだのは初めてのことだった。

 そして思い知る。

 現在の地上はここに比べればどれほどの楽園であるかなど。



 このどこまでも暗く孤独なはずの海溝の中、低い……低く長い大鐘楼のような音が常に響いている。

 海溝の底から延々と。あまりに恐怖にかられる異常な状況だ。

 常人ならば数分と待たずに気がおかしくなってしまうだろう……。


 そして赤々とした光がそこに向かって満ちている。


 そして極め付けは……主にγタイプのドミネーターの出現と共に現れる巨大なグレアノイドの柱。

 海上都市ではドミネーターモノリスと言われるそうだが……これが海溝の底で行き交っているのだ。


 それも凄まじい数が。

 まるで肥沃な土の中を這うミミズのように。


 汚染された本土を抜け大海溝の上を進む海上都市は、その実針の筵の上を行く舟だった。


 だが……それはガーネットにとっては今更の話だったようで……。


「しどぉ……ここは初めてぇ?」

 

「ああ、ひどい音だ」


 この腹の底まで響く音はモノリスが出現する際に放たれるもの。

 海面上まで届くことはないが、深度500メートルを超えると顕著に聞こえ、この深みまできた人間の精神を蝕んでいく。


「ひとりでできるぅ?」


「もう大丈夫だ。水中での感覚は一通り覚えた」


 眼前には採掘シャフトから引きずり下ろしてきた巨大なドミネーターのなりそこない。

 際限なく肥大化し、まるでぼこぼこと発酵したパン生地のようになっているそれを、ベリオノイズ背面から打ち出した6つの照明弾が照らしている。


 ベリオノイズの装備は相も変わらず鑿岩機のみだが……。

 この海中では威力の減衰が少ない武器の一つである。

 要はやりようだ。

 

 この水圧の中でもスラスターは問題なく動作し、水中での機体バランスを維持し続けられている。

 ステータスモニターを確認した限りでは、異常な部分は脚部関節機構のみ。

 おそらくサスペンションもないのに前回作戦時に無理をさせた脚部が水圧により動作不良を起こしているのだろう。

 だがここは水中だ。脚はある程度動けばいい。


「いくぞ……ベリオノイズ」


 操縦桿を強く握り、モニターに解析した敵ステータスを映し出した。

 暗闇の中、ベリオノイズの両目が赤い光を灯す。


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