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56話ー奇跡の出会いー


 「っ……!?」


 自分の腕が弾け飛ぶのも覚悟しながら打った一撃はブラックボックスの触腕とぶつかり合わなかった。

 その代わり、その腕が打ち抜いたのは……。


「がっ……ふ……」


 ガーネットの背中だった。

 ガーネットは雛樹とブラックボックスの間に割って入り、雛樹を庇ったのだ。

 しかしお互いに攻撃を繰り出していたため止めきれず……雛樹の拳を背中で受け、さらにはブラックボックスの触腕も正面から受けてしまった。

 触腕に関しては、防御壁を張ったが急ごしらえのため強度が十分でなく貫かれ、わき腹に突き刺さり貫通する。


「おい……何してるんだお前……!」


 ガーネットの腹を貫きすぐ目の前で静止した触腕の鋭利な先から滴る血液に呆然としながら、掠れた声でなんとか言葉を放り出した。


「大丈夫ぅ……。これくらい……慣れてるからぁ……」


「慣れるかそんな傷……ッ」


 右腕の侵食がひどく進行している。凄まじい熱と痛みで思考がまとまらない。

 

 「でも……ああ、そぉ……そういうことねぇ……」


 これだけ凄惨な傷を負っていてもガーネットはどこか納得したような様子でつぶやいた。

 6年後の祠堂雛樹であるドミネーターの触腕に貫かれ密接に繋がった所為なのか……断片的ながら記憶が流れ込んできた。


 だが断片的で十分だったのだ。

 6年後の雛樹が自分に対して敵意を向けて来る理由を知るには……。


 そもそも、このドミネーターと化した祠堂雛樹は方舟に来ていない。

 今の雛樹は本土にて軍部に捕らえられたが、道中のΓタイプドミネーターとの戦闘を経て結月静流に見つかり方舟にやってきた。


 だが、一つの可能性としてもし道中のドミネーターとの接敵がなかったとしたら。

 あったとしても結月静流に見つからなかったら。


 その時、雛樹は本土の軍人として在っただろう。


 そう、6年後の雛樹は徹頭徹尾本土側の人間であった。

 もっと言うなら、方舟の敵対者……その方舟の最高戦力であるステイシス=アルマの敵ということになる。


「そう……あなたは……あたしの敵」


 もっと言うなれば……その6年後の世界のステイシス=アルマは敗れている。

 6年後の祠堂雛樹は方舟の最高戦力にすら届きうる存在となっていた。


 ぞろぞろと流れて来る記憶の断片をもう少し辿っていたかったがそうもいかなくなってきた。

 ガーネットは流れ出す自分の血液をグレアノイド粒子化し、BB(ブラックボックス)を縛るワイヤーとして物質化していたのだが想像を超える力により引きちぎられんとしていた。


 ずるりずるりと腹から触腕が抜かれていき、ガーネットの腹部、口から血液が溢れ出す。

 だがガーネットに苦悶の表情はなかった。

 どこか安らかで……そして……。


「しどぉ……やっぱりしどぉとの出会いは奇跡だったみたい……」


 えへへと微笑みながら、背後の雛樹に笑いかける。

 血塗れの笑顔。

 雛樹はふらつき倒れそうになるガーネットを左腕で抱えて支えてやった。


「おい一人でなに納得してる……。後でちゃんと説明してもらうからな……!」


「そいつ抱えながらじゃ……まともに動けねェだろ……。俺の後ろに来い……。時間稼いでやっから……すみに置いてきやがれ……」


「あぁ……。……!?」


「あ……?」


 ガゴン。

 足元から腹の底に響くほどの金属が激突した音が聞こえた。

 足元はこの採掘シャフトと海中を隔てるゲートがある。

 ここの真下はもうすぐに海中であるが……何かがぶつかることなどあるのだろうか。


 この海上都市が進んでいるのは大海溝の上。巨大なグレアノイド隆起があればぶつかることもあるだろうが……。


「なんだあいつ……何するつもりだ……!?」


「オイオイ嘘だろ……。ヤベェ……あいつこのゲートの扉ぶち抜くつもりだぜ……!!」


 頭上に現れたのは今までの比にならないほど高密度で巨大な赤光の槍。

 それはもはやこの採掘シャフトそのものを破壊せんばかりの威力を孕んでいた。




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