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52話ー力のぶつかり合いー

 雛樹は空を切った蹴り足をそのままに後方に翻りながら、体は逆立ちの状態で2発、床に足をつきしゃがんだ状態で2発本土兵に撃ち込んだ。 

 狙いは胴体であり、この距離だ。

 自分の蹴り足を避けてのけぞった状態からは回避できないだろう。


 その弾丸はすべてその本土兵の胴体に着弾し、まさにひしゃげたという言葉がしっくりくるような形で体をくの字に曲げ、大きく後ずさりした。

 ぼたりぼたりとあふれ出すように血液が溢れているのが見て取れたが……。


 その赤き残光を残す瞳はまっすぐ雛樹に向けられていた。


(撃ち倒せもしないのか……)


 本土兵が身につけているタクティカルベストに仕込まれた動きを阻害しない程度の防弾プレートはしっかり割れ、撃ち抜けているはずだ。

 割れたプレートが腹部に刺さってもいるはずなのだが、顔色ひとつ変えず大振りの鉈を取り出してきた。


「素晴らしい力だ……これが一時のものとは本当に惜しい!」


 口元から血液を滴らせながら、本土兵の男は凄惨な笑みを浮かべる。

 この力が完全なものになれば……と。

 常人ならば向かってきた体躯はとうに視界から消え、切り刻まれているほどの鉈さばき。


 ガバメントからナイフに持ち替え鉈の軌道を視界の端で捉えつつ紙一重で体を逸らし回避、回避、回避……。

 鉈をナイフで受けでもすれば重みで押し負ける。

 激しく後ずさりしながら、どうしても回避できない一撃のみナイフの腹で受け滑らせるように軌道を逸らす。


 その際に散る火花で歪んだ男の口元が照らされる。

 おそらく正気もそろそろ失せるだろう。

 

「ゥゥるああ!!」


 ひらりひらりと身を躱す雛樹に業を煮やした大ぶりの一撃。

 待ってましたと言わんばかりに雛樹は左足を外側に弧を描くように後方へズラし支えとし半身になった。


 右手で逆手持ちし、ナイフの刀身を腕にひたりと当て鉈の一撃を力任せに受け留めた。

 刹那の隙。

 ぎょろぎょろと蠢き始めた本土兵の赤い瞳を真っ直ぐに見ながら雛樹は左手を腰後ろに持っていく。


 腰後ろには水平に装着した革製ホルスターに差す二連装散弾銃。

 ホルスターにおさまったままのその散弾銃の引き金を引いた。


 凄まじい破裂音とともに撃ち出されるのは12ゲージバックショット。

 中型動物などを仕留めるために使用される弾薬を二つ同時に爆裂させ、合計18の鉛玉が切り詰められた銃身を通り、至近距離で本土兵の胴体に着弾した。


 まさに破裂した、と形容すべき人体損傷。

 大きく吹き飛び、床に体を打ち付け小さく体を跳ねさせたあと2、3度転がって仰向けになって止まった。


「ごぷっ……」


 まるで噴水のように、内臓に溜まった血液を吐き出す本土兵に対し、雛樹はホルスターから抜いた散弾銃の弾倉を開き、2つの空薬莢を排出。

 代わりにベルトに備えていた弾薬を左手の指の間で挟んで抜き、装填した。


「……」


 歩み寄りながら倒れた本土兵に向かって撃つ。

 凄まじい破裂音と肉と骨がひしゃげ飛び散る音。


 薬莢を排出し、装填し、撃つ。排出、装填、射撃。


 コツコツと距離を詰めながら容赦なく弾を叩き込み、本土兵の男の足元に来るころには血だまりの中、先ほどまで人の形をしていた肉塊の前に立っていた。


「こんな体になってまだ息があるか。辛いだろ、その体」


「ぉ……お……おお……」


「いくら傷められてもなかなか死ねない。延々とその痛みに苦しみ続ける。そういう生き物にあんたはなったんだ。素晴らしい力だろ。一時のものでよかったな」


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