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51話ー接敵ー

多少開けたエリアに待ち伏せしていたのは4人の兵士。

すでにドミネーター因子を打っており身体の変質と精神汚染が始まっているようだ。

 蘇芳が請け負うと言った3人については。


「随分けったいな見てくれになってもうて……。不憫やわぁ。上手に逝かせたりますよって大人しゅうしてや」


 接近しつつ6本のフォトンノイドブレードを展開させた。

 腰付近から射出されたそのブレードはそれぞれが標的に刃先を向けて飛翔する。


 手数が多く、ドミネーター因子に反応しある程度の拒絶反応を起こさせるフォトンノイドのブレードは現状の多数戦に向いている。

 この装備ならαタイプ程度のドミネーター相手に有効に立ち回ることができるのだ……が。


「……んんっ?」


 そのブレードは蘇芳に制御され、因子により変質し触腕化した部分を切り裂いていたのだが……。


(なんやろねぇ……因子による細胞異常増殖やろか)


 3人の内、1名の様子がおかしい。3人ともおかしいのだが、因子による変異がやけに激しい者がいる。

 2名は放っておいても死亡するだろうが、おそらくその一人はマズイ。

 

『ぉお……オオオァオオオオ……苦しイ……たァ……タスケテクレェ……』


 人の原型をとどめないほどの変異を始めた仲間を横目で確認し、フォトンノイドブレードの対処をしつつ本土軍の兵士は爛れた口を開いた。


『ィヘへ……おォい、ミロ、よ。俺たちすっかり、バケモノダゼ……』


『気、ヲしかぁり、モテ。この先に、奴らをイカセル……ナ』


 見ていて気分のいいものではない。この先に行かせたくないということは彼らの目的はあくまでも足止めだろう。

 

(時間かけとる余裕はないみたいやね……)


 ボコボコと肥大化する一人の攻撃とも取れないがむしゃらな動きに巻き込まれないよう警戒しつつ、まだ理性の残る二人の黒い触腕よるなぎ払いを跳躍し、回避した。


 だが手数が多いのは相手も同じ。

 跳躍したのはまずかった。

 眼下に捉えたのはドミネーターが頻繁に使用する物質化した赤い光の矢。

 歪な形をしているが、それでもまともに受ければ致命傷になりかねない。


「もうすっかり怪物気取りやねぇ……!」

 

 ……。


 一方の雛樹も任された一人に対し確実に殺傷させられる距離まで踏み込んでいた。

 因子による変質により身体各部位の肥大化、グレアノイド侵食による黒化等が顕著にみえるため危険度を高く見積もり蘇芳が自身で請負った。

 まだその変調をきたしておらず危険度が低いと判断された一人を雛樹に任せたのだ。


 蘇芳は上官としてより危険度の高い相手を見積もったつもりだった。


 だが……。


 この場で一番恐ろしいのは、因子を取り込んだに関わらず大きく変調をきたしておらず、正気を保っている人間である。


「邪魔をするか……201の生き残り」


「何をそんなになって足止めしようとしてる。その部隊章……本土軍第2課の荒事専門部隊だろ。撤退作戦にしては足止めに人員を割きすぎてるんじゃないか」


「今の……お前には関係のないことだ……」


「仲間の変異が激しいな……あんたは何も思わないのか。同じ死線をくぐり抜けてきた仲間じゃないのか」


 雛樹は両手でガバメントを構え、両目に赤い瞳を宿す本土軍の屈強な兵士に向けていた。

 照準はまともに合わせていない。その男の瞳を覗くようにし、あくまでもその男の狙いを探るように言葉を交わしていく。


「私もいずれああなる。皆同じだ……」


(……来るか!)


 赤い瞳が揺れ、残光が上から下へ流れた。

 腰を落とし脚部に力を込め、一瞬時が静止したかのような錯覚さえ見せつけ……。


「うぉぉオオオア!!」


「いっ……!!」


 自分が放ったガバメントの銃声の後、ボッという音が眼前をかすめた。

 まるで瞬時に移動したかのような加速で銃弾を避け、懐に入り込んできてからのあまりにもまっすぐな正拳突き。

 それをギリギリで見切って雛樹は上体を大きく逸らし、回避した。


 床に手をつき後方に翻るついでに本土兵の顎を狙って蹴りを見舞おうとするが回避され……。


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