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第3節3部—ソロ・ダイナミックエントリー—

 不審者がいる会議室ではなく。その隣の会議室の入り口へ。


「おい、見てこい」

「はいさ」


 一線級の兵士をマークしながら、第三区画を見下ろしていた一人が気だるげに返事をし、入り口へ足を向けた。

 相手はたった一人だという。薄い扉の向こうにいたということは会話も聞こえていたはずだ。

 尻尾を巻いて逃げ、応援を呼ばれる可能性があるが……問題ない。そのためにこの“ビルの屋上”に逃げるための策を用意してある。


「おーい、いねーぞ!」

「応援を呼ばれた可能性があるな……。どうだ、ハックは」

「もう問題ねー。あとはプログラムが書き変わるのを待つだけだぜっと……」


 入り口の向こうには誰もいやしなかった。たった一人では対処できないと踏んで人を呼びに行ったに違いない。


「屋上で待機させてあるヘリの飛行システムを入れておけ。店じまいだ、急げ」

「はいさー……ハインドの飛行システムを立ち上げ……あ? なんだ。システムエラー? ヘリのシステムに接続できねえ」

「オイ、連絡にあった兵士は“上”に向かったって言ってたな?」

「あ、ああ……そうだ。確認できただけでも10階以上には」

「まずいな……それなりに場数を踏んだ男だったらしい。ヘリは諦めろ、非常階段からラペリングで降下する。我々が気づいた時点で奴は策を弄さねばならなくなったようだ。姿を消している今が……」

「はっ、オイ!!」


 ガラス張りの壁から外を見ていた不審人物が叫ぶと同時に、ガラスを派手に割って飛び込んできた円柱状のなにか。

 その円柱のピンになにか繋がっている。

 ワイヤーだ。ワイヤーの先に取り付けられたカラビナとピンの輪の部分が繋がっているのだ。


 まさか、隣の部屋からワイヤーでつないで振って飛び込ませてきたのか。


「スタングレネードォ!!!」


 見慣れた形状、飛び込んできた物体の名を叫び警告する。とんでもない勢いで巻かれたワイヤーが、ピンだけを取り去り側面に穴の空いたその円柱を、会議室に置き去りにした。


「伏せろ!!」


 それぞれに指示を出していたバラクラバにサングラスをかけた男がそう言いながら、地面に落ちたその非殺傷性手榴弾を蹴って少しでも遠くに滑らせる。


 炸裂。


 耳を、脳を裂くような炸裂音と目を焼くような閃光が会議室を満たす。

 スタングレネードはその音と光で対象を難聴、目を潰し、昏倒させる非殺傷性手榴弾。負傷はそうそうさせないが、至近距離でまともにあたればまず立ち上がるのも困難な状態に陥らせることができる。


「クソ、目がやられた!! こっち側に蹴り飛ばしてくんじゃねー!!」


 悪態を付く暇など与えない……とでも言うように畳み掛けてくる。会議室の薄い壁が爆煙とともに吹き飛ぶ。破片を防ぐように身を小さくする不審人物たちが次に見たのは……。頑丈なオフィステーブルをバリケードに、小銃を構える青年の姿だった。


「散れ!!」


 手榴弾で壊した壁の向こうの不審人物たちのそれぞれが反撃態勢を整える中、雛樹は小銃の引き金を引く。

 目標は、怪しげな機器と置き去りにされたラップトップ。


「コンタクト……」


 連続した発砲音と共に、ライフルの弾頭が火線となって怪しげな機器とラップトップを蜂の巣にしてゆく。火花が散り、破裂したのを確認すると一瞬射撃を止め、セレクターをセミオートに。物陰に滑り込んで行く不審人物たちに照準を向けて一発ずつ狙っていった。


 床を削り、オフィスチェアの背もたれを吹き飛ばし、棚を貫き倒す。



「ガぁっ!! ちくしょう足をやられた!!!」

「おめめ潰されるわ、あんよ抜かれるはでツイテねーな、ガンド」

「いいからカバー頼む!! あいつはヤベェ!! 頭のネジ1、2本とんでやがる!!」

「ダイナミックエントリーもいいとこだったな、見事だ」

「褒めてる場合かクソが!!」


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