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44話ー取り残された本土兵ー


 侵入者である本土部隊員捜索隊4人がシャフトを降りていった、時を同じくして……。


 場所は採掘シャフト100メートル地点。

 メンテナンス区画にある部屋に彼らはいた。


「この音……はは、来たみたいだね。やはり僕らは初めから裏切られる予定だったみたいだ、みお。すまない……」


彼らは聞いた。この採掘シャフトに何者かが入ってきたことを。そして知っていた。この音の正体を。


「ううん……奏太そうたのせいじゃないよ。私たちは飛燕さんの思想のもと、本土のために動いてきたもん……。でもあの女が……」


「今更恨み言なんてよしなよ。あの時点じゃ誰もわからなかった。飛燕さんも僕らも“あの女”の手の平の上で踊っていただけだったなんて。あんな薬まで作って……あんなのは本土の救いになんてならない。人を化け物にするあんな……」


 この二人は、そう。

 雛樹にタイムゲートシステムを起動させるように仕事を依頼した二人だ。

 雛樹とそう歳は変わらない男女の本土部隊の兵士。

 

 満身創痍なのはおそらくなんらかの拷問の後だからだろう。

 戦闘をした形跡すら服や体に傷として残っている。


「本土に帰りたい……こんな汚いところで死ぬの嫌だよぉ」


「見つかっても死にはしないと思うよ。ただ死ぬよりつらい尋問は待ってるだろうけどね」


「……はぁ、伊庭兄ちゃん助けてくれないかな……助けてほしいな……美味しいご飯食べたい……」


「ふん、何を今更。あの人が僕らを助けるわけないだろ。いいかい……僕らは誇り高き本土軍の兵士なんだ。最後まで誇り高くあるべきだよ」


 澪と呼ばれている、今にも泣きべそかきそうな声の女兵士に対し奏太と呼ばれている男はやけに気丈に振舞っている。

 

 彼らが雛樹にガスマスクの男としての任務を依頼した時には他にも本土兵がいたはずだ。

 そう、“飛燕の直接の部下ではない”兵士が。


 それにあの女……とは。

 飛燕からステイシスの血液サンプルを渡され、ドミネーター因子を使用したドーピングドラッグを作り出すきっかけを作ったのは一人しかいない。


 全てはあの時、セントラルストリートパレード襲撃の時点から決まっていた結末だったのだろう−−−−……。


「んあ、なんやのんこの部屋セキュリティかかっとるね」


 その部屋の外。

 他のメンテナンス区画では全くと言っていいほど施錠されていなかったにもかかわらず、施錠されている扉を蘇芳は発見した。

 もちろん、セキュリティの解除権限は用意されてあった蘇芳は当たり前のように鍵を開け中に入る。


「ん、なんやおるねぇ……。出てきぃやドブネズミはーん。うちが飼ったるからなんも心配いらんよー」


(……この声、口調はセンチュリオンテクノロジーの蘇芳か……。これはダメだな……助からない……ごめん澪……)


(……)


 二人は傷だらけのまま、その部屋の数少ない隠れられそうなところに身を潜めていた。

 澪は狙撃銃を、奏太は拳銃とナイフを握るもセンチュリオンテクノロジーの蘇芳相手となると心もとないどころの話ではない。

 なにより蘇芳は容赦がないことで有名だ。下手に逃げようと反抗すれば散々弄ばれたあと殺される可能性だってある。


(扉は開いたまま……一か八か逃げてみようかな。でも……あの相手にだまし討ちが通じるかどうか……)


 緊張で高鳴る心臓を押さえつけながら、いよいよという時に備えて考えを巡らせる。

 しかし自分たちが助かる未来が全くと言っていいほど見えない。


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