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第3節2部—敵性感知—

《8階非常口のセキュリティを押さえてるわ。あなたはアンカーで外壁を……》

「え? もう正面からエレベーターに乗って上がるところだぞ」

《……なんで指示を待っていなかったの! ……いえ、ごめんなさい、私が遅かったわ。でもバカじゃないの!? 正面からなんて……そのビルの管理者自体がこのクラッキングの件に絡んでるとは思わなかった!?》

「事は一刻を争うかもしれないんだろ? 正面から行った方が早い」

《……七階で降りて。もしそのビルの管理会社自体がこの件に関わってるとすれば……もう8階のクラッカーにはあなたが向かっていることは知っているはずよ……ほら、一人エレベーター前で待ち伏せてるわ》

「わかるのか?」

《そのビルのセキュリティシステムに、企業連のサーバーからアクセスして8階のカメラをハッキングしたのよ。いいから7階で……》

「逃げてないなら好都合だな。相手が一人だとナメられてる方が幾分やりやすい」

《……は?》


 エレベーターの示す階数が5階を超えたが、7階のボタンを押すことはなかった。


……——。


「警備兵が一人上がった……か。まさか不正アクセスに勘付いたのか。それとも外から我々の姿を確認し、様子を見に来ただけなのか……」


 オフィスビル8階、エレベーターフロア前。頭部全体を覆う黒いバラクラバを被った男性が、登ってくるエレベーターを見張っていた。

 6階……7階……8階……。9階。まだ登っていく。


「……考えすぎだったな」


 彼は安堵のため息をつき、まだ登っていくエレベーターに背を向けて、1504会議室へ戻っていく。


「まだハッキングは終わらないか」

「もうすぐだ。モクでも吸って待ってな、へっへ」


 会議室にいたのは、戻って来た不審な男を含めて4人。その全てが顔をなんらかの方法で隠し、視認できないようにしている。兵装から、所属は不明。


目標ターゲット“パンドラボックス”の公開まであと10分だ。それまでに終わらせ、ひと騒動起こす。わかっているな」

「わかってるさぁ……と。まさかこんだけ量子コンピューター積んできても時間かかるとはな。ほんと方舟の技術はバケモンだぜっと……」


 身の丈もある、巨大な“受信機”の調子を見ながら、不審人物の一人は息を飲んだ。

 量子コンピューターを“積んできても”とは言うが、このオフィスにある不審な機器はこの受信機とそれをコントロールする小さなラップトップのみ。

 量子コンピューターらしきものは全く見当たらないが……。


「さて……ハッキング完了まであと3分だぜ……。と、その前に……」


 ラップトップをいじっていた男が、親指を立てて会議室の入り口辺りを指差した。


「なにか居るなぁ?」

「連絡があった野郎はこれより上にいった筈だが……」



……——。


 8階で降りず、その上の階まで登ってから階段で降り、問題の会議室前まで来た雛樹は部屋の中からする声に鼓動をはやめていた。

「別の通信回線を感知してやがる、そこの入り口だ。間違いない」という言葉。

 自分が今しているインカムが原因でバレたのだ。すぐに回線を切ったがもう遅いだろう。


(クソ……これだから電子兵装ってやつは……)


 兵士としてアナログな部分の多い雛樹にとってこれは予想できなかったことだ。ライフルのセレクターをフルオートに合わせ、腰にあるスタングレネードを右手に取り、会議室側の壁に背を預け入り口に近寄っていく。


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