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35話ー忠犬ー

 金さえ稼げれば、それで生きていくことができれば。

 そう考えたときに頭の中に浮かぶのは本土にいる孤児院の子供達の笑顔。


 今は貧しいながらも、軍部の統治下にある街で穏やかに暮らしているはずだ。

 だがあくまでも確証はなく、今どのような暮らしをしているのかは気になるところだ。

 

 そう考えるのは、孤児院の彼ら彼女らを守りたい対象だと認識していたからか。


「そうか……そうだな。うん、俺もあった。守りたいもの。で、もうその役目は終えたんだ」


 平和であるはずの街で暮らせるように配慮した以上、もう守りきったと言ってもいいのではないか。


「へぇ、そりゃ……なんだ。よかったじゃねェか。あんま詮索しねェが。で、あれはどうなんだ。守る守らないで言やァ結構そういった対象になると思うんだが」


 RBが背後を指し示すように、くいと親指を立てると……。


「んっしょ。しどぉー、おなかいっぱぁい」


「おい乗るな乗るな」


 先ほどまでしこたまお代わりしまくり、お腹いっぱいになったガーネットがバルコニーへ出てきて雛樹の肩に飛び乗った。

 丁度肩車をする形になり、雛樹の頭を抱えるようにして一息つく。

 随分と満足げな表情で雛樹の髪をわしゃわしゃと掻き回しているが、まあこれはそこそこ美味しい飯を作った雛樹を労っているのだろう。

 ご苦労ご苦労と。


「こいつとは守り守られだな。どっちがどうってのはない気がする。逆に助かるときのほうが多いくらいだ。な」


「なぁにぃ? 難しい話ぃ? べっつに難しい話でもいいけどぉ、けふっ」


「お前腹膨れてんなあ。動き悪くなるぞ」


「この程度で悪くならないわよぅ。あ、見て見てぇ、また余計なのいるぅ」


 と、ガーネットが指差した先は遥か彼方。

 言いたいことは雛樹にもわかっていた。

 おそらくガーネットを引き受けた時から、自分たちの周りに余計な監視がつきまとっている。


 常人では視認できない距離からこちらを確認しているのだろう。

 その監視はおそらく……高部総一郎の部下、もしくは。


「高部がお前に姫さんを預ける際に掛けられた条件か……だろうな。そうなるとだ、奴らァおそらくオズヴァルトあたりの駒か」


「あんまりしつこいとぉ……」


「殺すんじゃねェぞ。使いっ走りでもオズヴァルトの部下だ。後で厄介なことになること間違い無しだぜ」


「しないわよぉ。しどぉに言いつけられてるからぁ。ていうかぁ、あんたがあたしに命令しないでくれるぅ? あんたを殺しちゃ駄目なんてしどぉには言われてないからぁ」


「駄目だぞ」


「はぁい」


 むすーっとしてはいるが、反抗する姿勢は全く見せない。

 猫のように気まぐれな部分があるが、雛樹のいうことはちゃんと聞き入れようとする忠犬めいた行動も見せる。

 どちらにせよ、自分の言うことはしっかりと聞いてくれるため、いざという時に手綱を握りやすい。



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