31話ー行きたくないー
「しゃふとぉ? や! ぜぇーったい嫌よぉ? おるすばんしてるぅ」
「お前の口から留守番なんていう言葉が出てくるなんて思いもしなかったぞと」
「いふぁいぃぃぃ」
グレアノイド耐性を持つ者に適した任務だということでガーネットも連れて行きたかったのだが、にべも無く断られてしまった。
そのため雛樹はこんな時に限ってなんでだよとガーネットの両頬を軽く抓ってやった。案外よく伸びるものだ。
(まあ、こいつがここまで言うんならなにかあるんだろ……)
普段なら間違い無くついていくと言うところでそれだ。しかも、その理由を告げようとしない。
「仲がいいんですね、お二人は」
今現在、雛樹はセンチュリオンテクノロジー本部ビル屋上の庭園いる。
ガーネットをそこで待たせていたため迎えに来たのだ。そしてその場には静流がなぜかいた。
理由を告げないわけがそこにあるのだとすれば考えられる事象は限られる。
その採掘シャフトとやらに、おそらく6年後の自分が潜伏しているのだろう。
ガーネットは6年後の祠堂雛樹を攻撃できない。いくら怪物になっていると言っても、彼女にとって雛樹は雛樹なのだ。
ガーネットの考えを察することはできたのだが、随分と静流が不機嫌そうだ。 静流が自分になついてくれているのはわかっている。ガーネットと会話していたのなら、なにか機嫌を損ねることをガーネットから聞いたのだろう。
「まあ、こんな仕事を一緒にしてるふぉあ……」
仲の良い理由を説明しておこうかと口を開くと仕返しとばかりにガーネットは雛樹の口に人差し指を突っ込み、内側から頬を引っ張っていた。
「あっはぁ、よくのびるぅ」
「……仲がいいことは良いことですが。ほどほどにしないとヒナキの頬が千切れちゃいますよ」
ガーネットが雛樹の口から指を抜きけらけら笑っているのを見て毒気が抜かれた静流は微笑みながらその様子を見ていた。
「しかし……採掘シャフトに本土軍の侵入者が潜伏している可能性があるから見てこいとは、あまり穏やかではなさそうですね」
「そもそもなんでグレアノイド鉱石の採掘施設なんかがあるんだ? この都市は海溝を進んでるんだろ」
「海溝の中でも、グレアノイド隆起と呼ばれる現象が起こります。その隆起したグレアノイド鉱石を採掘するのがその施設の役割です。ご存知てしょうが、この海上都市はグレアノイドエネルギーによって支えられていますからね。使われるグレアノイドの7割はその採掘シャフトによって供給されているんです」