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30話ー最善の手ー

 蘇芳が雛樹に向かって言っているのは、その薬を作成された責任がお前にあるのではないかということだ。

 もっと言えば、お前のせいで今回の死傷者を出したのではないかと。

 暴論ではあるが、責任感の強い人間ならばまともに受け入れられる言葉ではない。

 そしてその真面目なのが責められている者だけでなく、評価する、できる立場である人間であるならば、雛樹の評価が下がる他ない。


 だが、そこで雛樹は眉ひとつ動かさず言う。


「本土兵の排除とアンノウンドミネーターの討伐、敵潜水艦に乗り込み再度のドミネーター討伐、本土軍飛燕の捕縛、ステイシスの奪還と……ただの“警備員”としてはよくやった方だと思いますが」


「ほお、言うやないの……でもなあ」


「でももなにもありません。あの時、あの状況で俺があの場所にいた事こそが最善だった」


 柄にもなく、大口を叩いた雛樹だったがそれでいい。

 責任逃れをするわけでもなく、あの時の行動が最善だったと言い切ればいいのだ。

 俺以外に何かできるやつがいたかと、暗に蘇芳を貶めるような言い方をした。


「もういいか? 蘇芳少佐」


「なんやアルビナはん、こんなおもろい子入隊試験落としたん? もったいないわぁ。入ってくれとったらウチが直々に扱いたったのにぃ」


 呆れた風なアルビナをよそに、蘇芳は雛樹に向かって「ちょっと意地悪シテもうたわ、堪忍なぁ」などと、少しばかり茶目っ気の入った表情で言う。

 試そうとしていたのかなんなのか、真意の見えない蘇芳の目に雛樹は多少なり不安感を持つ。

 思いっきり下手に出るのは避けたいが、かといって軽々しく敵に回したくない相手だ。


「無駄に試すのが好きなんだよこの狐女は。回答としちゃ悪かなかったが、気に入られるとメンドクセェぜ。ほどほどにしとけ」


「ほんまRBはんはいけずやわぁ」


 などとおちゃらけた風に言ってはいるが、表情には怒りの色が見えていた。

 RBはまた煽り文句を言おうと口を開いたのだが、そこで咳払いをしたアルビナの機転によりRBはその口を閉じた。


「いいか、この薬物はまだネズミが隠し持っているにすぎんが……どれだけの量を持ち込んでいるのか、それに流入経路が不明である。よって……」


 よくない雰囲気の流れを断ち切って、アルビナは本筋の話を進めた。

 例の薬が開発されたのは、ステイシスの血液が本土に一度持ち帰られてからの筈。

 となると、パレード襲撃の際の残党以外にもこの都市に潜り込んだ本土軍の人間がいるということになる。


「ある程度のグレアノイド耐性を持つお前たちに採掘シャフトの調査を依頼する」


「……ハァ? おいおいあんな陰気なとこで何させる気だ?」


「ほんまやわ。あんな磯臭うて錆臭うてカビ臭うてかなわんところで何を調査しろって言いはんの」


 雛樹はその採掘シャフトというものがどんなものか分かったものではなかったが、そのふたりの反応からロクでもないところだということだけは察することができた。


 グレアノイド耐性を持っていなければならない……ということはグレアノイド鉱石の採掘設備だろう。



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