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第21話—妹—

 なんにせよ、ガーネットが言いたいことというのは通常の軍人より二脚機甲の操縦の上達が早いということだった。

 

「やればできるんだから、ちゃんと使ってあげることぉ。しどぉはちょっと無茶しすぎぃ」


 おそらくガーネットは、身一つでドミネーターに向かっていくその無謀さのことを言っているのだろう。


 ドミネーター相手に生身を晒しつつ戦闘を挑むなど、ごく少数の人間を除き自殺行為だ。

 それは携行型対ドミネーター兵器の開発が進む海上都市でも本土でも同じくする常識であり、祠堂雛樹とかつて所属していたCTF201はその常識の外に存在していたイレギュラーなのだ。


「俺は……まだ戦闘において自分の技量しか信用できてない」


 使い慣れない兵器より、己自身を信用し戦闘に身を置く。

 それは何もわがままなのではなく、現状それが最善と取れるためだ。

 二脚機甲ベリオノイズを自分の体の延長線上として捉えられてないから不安なのねぇとガーネットもある程度の理解を示す。


「でもぉ、その考えを捨て切れなかったしどぉが、今のしどぉの前に現れたのよぉ?」


「……」


「あのしどぉ、すごく薬の匂いがしてた。あたしも投与されてた、ドミネーター因子をより活性化させる薬ぃ……。6年後の世界で何があったのかはわからないけどぉ、ひどい状況に身を置いていたはずよぉ」


 己の中のドミネーター因子に頼りきり、そのくせドーピングまでして何かを成し遂げた結果がアレなのか。


「しどぉ」


「……ん」


「あのしどぉと対等にやりあう必要があるならぁ……。しどぉの機体をまともに改修する必要があるわよぉ」


「改修……金が必要だな」


「そう。絶対にいるぅ。でも、あの子をしっかり組んであげたその時は……機体名を変えないとぉ」


 P−0、ベリオノイズ。それはかつての試作機体につけられたものであり、前時代の遺物のようなものだ。

 ベリオノイズのコアであるグレアノイドエンジンはステイシスの代名詞でもあるゴアグレアデトネーターとほぼ同じものであり、ポテンシャルは並みの量産機を凌駕する……はずなのだ。


 ただ前時代の試作機のため、パイロットの安全など一切考えてない格闘性能に特化した機体特性を持つ。


 わかりやすく言えば、ものすごく力はあるが異常に不器用な機体なのだ。


「しどぉ。今あたしはしどぉの味方よぉ。しどぉに何かあっても助けるしぃ、面倒臭いことも頑張るわぁ。だからこそしどぉはなにがあっても傷つけたくない。本当に本当に傷つけたくない。この世界で唯一あたしに触れてくれるその手をあたしは攻撃できない」


「ガーネット、それは俺が……」


「そぉ。あのしどぉが何をしようとしているのかわからないけどぉ……。しどぉ自身がなんとかしてあげて。あたしにはなにもできないからぁ」


 ごめんねぇ。なんて言いながら悲しげな表情を浮かべるガーネットに、何も言えなかった。

 戦えない自分など捨てられても仕方ないなどと思っていたガーネットのことだ。

 それを面と向かって言うにはかなりの勇気が必要だったことだろう。

 だが……ここで黙っていてもガーネットを不安にさせるばかりだ……だから。


「ガーネット、さっきも言ったけど俺はお前を兵器としてなんて見てない」


「……じゃあ、なぁに」


「仕事仲間であり……そう、妹みたいなもんか」


「いもーとぉ?」



 ガーネットと自分の中を言葉で言い表すならばそれが適切だと雛樹は思ったのだ。


 雛樹は……だが。


「にひひ。おにぃー」


悪戯な笑みを浮かべながら、頭をぐりぐりと雛樹の胸板に擦り付けてくる。

 ガーネットにとって、お父様の他に家族が出来た瞬間であった。


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