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第13話ー敵前逃亡ー

 確かにあの小型ドミネーターに対して違和感は感じていた。

 自分と同じように無機物をグレアノイドに変換し、己の武器とするドミネーターなど見たことがない。


 だがその違和感はガーネットの戦意をそれほどまでに削る要素だったのかと言われると疑問だ。


 そして、耳に入ってくる警報。

 このままでは企業連の戦力がこちらに向かってくる可能性がある。


「ガーネット、お前が企業連の部隊に見つかるとヤバイ! 隠れてろ!!」


「しど……しどぉも!」


「俺はあいつを……ッ」


 まともに見切ることもできず、姿勢を低くするだけ低くしてドミネーターの攻撃を大まかに回避する。

 しかし、あまりに雑な回避のためいちいち体勢を崩し立て直しに時間がかかってしまう。

 まるで虎に弄ばれるネズミのような構図に、ガーネットは危機感を覚えていた。


 あのドミネーターと……いや、ドミネーターと考えるのもおぞましく悲しい何かと戦い、祠堂が勝てるビジョンが見えない。


 自分が本気で戦っても5分といったところだろう。

 そんな相手だ、普段なら嬉々として壊しにいくところなのだが……。


「しどっ」


「早く逃げろ!! やり合いたくなけりゃやらなくていい!」


「しどぉ……」


 どうしても祠堂を見捨てて逃げたくなかった……それに、逃げていい……と言われたことに対してひどくショックを受けてしまった。

 自分は兵器だ。

 目標を破壊することを拒む兵器がどこにある。


 使えない兵器など……邪魔になるだけだ。


 視界が歪み、嗚咽が漏れそうになる。

 だけど、戦えないのだ。あのドミネーターとは、戦いたくないのだ。


「……ほんとに、あいつは変に物分りがいい」


 ガーネットは身を隠した。企業連の部隊に見つからないように……そして自分が邪魔にならないように。

 そうすることしかできなかった。


 そして、ガーネットが去った瞬間……苛烈な攻撃を続けていたドミネーターの動きが何故か止まった。

 

 その隙を突き、半身をドミネーターの懐に滑り込ませつつ打ち込んだのは、赤き杭。

 グレアノイドを精製し、形作ったそのモデルはベリオノイズの兵装パイルバンカー。


 絶大な威力を持って放たれたその一撃は、ドミネーターの胴体を貫いていた……はずだったのだが。

 

「……冗談だろ」


 赤き光の杭は、ドミネーターの胴体に食い込んだところから再び黒く禍々しい鉱物に変わっていく。

 グレアノイドの再変質。

 そんな芸当ができるのかと雛樹は目を見開き、自分の腕にまで及んだグレアノイド侵食に表情を歪めた。


『ギっ……ギギギギギ』


「クッ……ソがァ……!!」


 雛樹の赤い瞳が一層濃くなり、強膜が黒く染まってゆく。腕の侵食に耐えるために己の中にあるドミネーター因子を強く発現させたのだ。


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