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第12話ー思考する怪物ー

 雛樹の右手に纏わりつく形で現れたグレアノイド物質化光の巨大な刃。


 赤い光が物質化したその刃はグレアノイドで構成された強固な体表に有効打を与えることができる代物だが……。


 その刃を同じような動作で展開したドミネーターに動揺したのか、雛樹は息を飲む。


 自分の展開したものよりもひと回り以上大きく、鋭く禍々しい。


「ドミネーターのくせに、俺と同じで侵食精製する必要があるのか……!?」


 いや、ないはずだ。ドミネーターはわざわざグレアノイドを出現させ精製することなどしない。

 それに雛樹のこの行動はドミネーター因子を持つが故、中途半端にドミネーターの能力をトレースしているだけなのだ。


 そのトレース行為を、純粋なドミネーターが行う必要などない。


 それに、目の前のドミネーターはあまりに小型である。

 一番小柄だと言われているタイプαよりもさらに小さい。


 だが……その強さは雛樹自身よく知っていた。


 ドミネーターがその刃を振りかぶり、雛樹も同じくグレアノイドの刃を構えた。

 1度目の衝突。


 先手を打つ形で一気に接近した雛樹が攻撃を加えようとしたが……ドミネーターはそれに合わせるようグレアノイドの刃を弾き出す。


 空間そのものが切れた家のような赤い残光と陽炎のような歪みを生み出したその一振りは雛樹の一撃ごと何もかもをも切り刻み吹き飛ばし……。


「……つあッ」


 壁に打ち付けられ、破壊されたグレアノイドの刃に目を向けるもすぐ真正面に向き直った。

 追撃を加えようと飛びかかってきたドミネーターから逃げるように、右手首に装着したアンカーを打ち出し巻き取り、自分の体を引きずるようにしてその場から離脱。


 できたかに思えたが、離脱しようと移動した先にすでに回り込まれていた。

 赤く輝くブレードによる大ぶりの一撃が迫り、命の危機を覚えるもとっさの判断で物質化光の防壁を展開することに成功。


 向かってきたブレードを止めることはできたものの、その衝撃を受けてヒビが幾重にも入り……。

 

「ああ……クソ!!」


 ドミネーターは右手にまとったブレードを、まるでガントレットのような形に精製し直し、凄まじい力を持って防壁へ打ち込んできた。

 すでにヒビの入っていた防壁はいとも容易く砕け、そしてその向こうにいた雛樹に届く。


 腕を前に出しガードしたものの、ほとんど意味をなさずあいも変わらずプレス機にでもかけられたかのような衝撃を受け、この施設の外壁すら破壊し外へと弾き出されてしまう。


 身体中が砕けてしまうような痛みと耳鳴り。

 一秒が10秒にも感じる感覚。


 地上50メートル。自分の体は今宙に放り出されてしまい、このままだと落下死する。


「ここ……まで……」


 強かったのか。

 CTF201を壊滅させた化け物はやはり、自分の手に負えるものではない。

 

 ドミネーター相手に今のようなダメージを受けることは多々あった。

 しかし、根本的な部分で勝てないと思わされるものがあった。


 おそらく、あのドミネーターは高い思考能力を持っている。

 相手に対して有効に対抗できる術を考え、実行する能力があり……そしてその一つ一つの対抗策が凄まじい機動力と膂力で実行されてしまう。


 一人では勝てない……だが、もう一人いればどうだ。


 空中でジャケットを引かれ、持ち上げられる感覚。

 殺された落下速度のおかげで無事に地上へ足をつけることができた。


「しどぉ、ものすごい吹っ飛ばされてきたわねぇ」


「悪い……助かった……」


 企業連の敷地外まですっ飛ばされていたらしい。待機していたガーネットが雛樹を捕捉し、空中で抱きとめたのだった。


 雛樹が顔を上げると呆れ顔のガーネットがいた。

 こんな少女が、こんなに頼もしく思えるとは。


「で、なにがあったのぉ?」


「話は……あとだ。多分追って来てるはずだ……」


 すでに崩れそうな足に力を入れ、立ち上がった雛樹の正面に追ってきていたドミネーターが着地する。

 着地した際の音すら聞こえないほど無駄のない着地の後、赤い目をこちらに向けてきた。


 その瞬間、ガーネットの顔色が変わり、一歩二歩と後退した。


「しどぉ……」


「あいつだ……あいつを殺す。いくぞ、ガーネット」


「ねぇ、しどぉ……」


「なんだ? くるぞ、ガーネット、構えろ!」


「しどぉ……あたし……あれ、攻撃したくない……」

 

「……なに?」


「なんで……、だめ……殺したくない……しどぉ」



 今にも頭を抱えてしまいそうなほど動揺しているガーネットに、雛樹はただただ焦りを覚えていた。

 なぜこんな時に、ガーネットがドミネーターに対しここまでの反応を示すのかまったく理解できなかったのだ。


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