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第9話ー闇の中の狙撃兵ー

  指定された場所は都市部から大きく離れた一部未整備区画。

  一部というのは、ある一角だけ綺麗に整備された場所があるためである。

  と、いうのはこの海上都市を安定して海溝の上に浮かせている巨大な反重力炉施設があるのだ。


 海上都市センチュリオンノアにはここと、あと二箇所に同様の施設がある。

 その反重力炉施設がこの都市を方舟たらしめていると言っても過言ではない。



「ここか……」


「ここってぇ、はづはづの事務所の下にあったとこぉ?」


 整備された施設周りとは違い、その周囲は未整備で本土と変わらぬ荒地となっていた。

 海上都市のほんの一部であり、かつ人など一人も見当たらないここにこそ鼠ははびこるものだ。


 見つけたのはかつて使用されていたであろう地下鉄道、その入り口。

 

 その地下鉄跡は相当入り組んだ構造をしているため、隠れるにはもってこいの環境なのだろう。


「しどぉ、真っ暗よぉ?」


「ここで待っててもいいんだぞ?」


「別に怖くないからぁ」


 強がりでもなんでもなく、本気で怖がっていないところが流石だと思わされる。頼もしいことこの上ないが、あまり面白みもない。

 などと考えられる余裕ができているのも、ガーネットがいるからだろう。


 しばらく地下空洞を進んだところで、空気が変わった。

 おそらく、その違いに気づいたのは雛樹とガーネットが同時であり、対処しようと身構えたのも同時だった。

 

 雛樹はそこら中に転がっていた石を蹴り上げ掴み、それをグレアノイドへ変質させ……ガーネットは右手の爪の先を変質、物質化光へ精製した。


 独特な発砲音が鳴り、消音器を通して向かってきた二発の弾丸。


 その一方は雛樹が展開した赤く光る物質化光の壁に直撃し弾け、もう一方の弾丸は、まるで箸で豆をつまむような気軽さでガーネットが長く伸びた物質化光の爪で挟んで止めた。


 止めた際の摩擦で火花が散り、ガーネットは片目を閉じる。


「……やる気ぃ?」


「大丈夫だ、多分な。落ち着け」


 お互いドミネーター因子を活性化させた行動を起こしたためガーネットは両の瞳に、雛樹は左の瞳に赤い光が灯った。


 その赤い瞳は暗闇の中でよく目立ち、少しでも動けば残光を残す。


「ほらまた当たらなかった……。なんか赤いし、コワイ。もうやだ本土帰る……」


「そう落ち込む必要はないさ。相手が悪すぎるんだ」


 その暗闇の向こうから、そんな声が聞こえてきた。


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