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ー遅れた誕生日プレゼントー



「なに穴あけてるんだお前は……大して丈夫でもないのに無理ばっかりするからそんなことになるんだよ」


 昔の静流を知っているからこそ、今の静流の凄さは分かっているつもりだ。

 憧れだけでここまで強くなれる奴はそういない。

 それこそ、どこか常人とはズレた部分がなければ彼女のようにはなれなかったろう。


 そのずれた部分を形作ってしまったのが自分だと思うと、あまりいい気分ではないのだが。


「私は弱くありません。もう昔の私ではないんです……でも、お兄ちゃん相手だと強がれません……」


「はは、それは昔からだろ。ずっと俺が世話焼いてたんだからな。無理に強がってもどうしようもないぞ」


 雛樹は意地の悪そうに笑いながら静流の頭を撫でる。むすりとした表情で撫でられるがままだったが……。


 静流にはそれでよかった。それだけでよかったのだ。

 昔はこうしてよく頭を撫でられていたが、今もこうして撫でてくれている。

 お兄ちゃんは、やはりお兄ちゃんだったのだ。


 誰かに取られてしまわないかやら、意味のわからない感情に振り回されていても仕方ないのだ。

 今も昔も、甘えても嫌な顔一つせず、弱みを受け入れてくれるのが雛樹だった。


「——————……——————」(ああ……、本当に、もう……あほらしいです)


「おいおい、日本語で話してくれよ。わからん」


「わからないままでいいです。が、どうしても知りたいなら教えてあげますよ、私の国の言葉」


「ああ、いい。俺日本人だから、他の国の言葉とか興味ないから」


「素直に勉強する気ないって言ってくださいよ……」


 断固として勉強を拒否する雛樹に呆れながらも、静流はどこかすっきりした表情で腰に手を当てて……。


「二脚機甲の操縦訓練は真面目に受けてくれますのにね」


「必死にの間違いだろ」


 静流による二脚機甲の訓練を初めて受けた次の日、打撲やら何やらで次の日1日動けなくなったことがある。

 いや、そんなことはいいのだ。


 ここに来てからここまで、気恥ずかしくてなかなか渡せなかったものを渡すチャンスだ。

 雛樹は数回頭を掻いてから、ため息をつき……。


「……ターシャ、改めて誕生日おめでとう」


「えっ、なんですか今更……あ」


 突然のおめでとうに驚いた静流ではあったが、直後に差し出された綺麗にラッピングされた箱を見て……。


「ありがとうございます……ヒナキ」


 それを受け取り、開けてもいいかと雛樹に聞くと、いいけどあんまり期待するなと釘を刺されてしまった。

 だが……。


「綺麗……! これは素敵です、ヒナキ……」


 青い鳥をモチーフとした、ネックレス。

 夜刀神葉月がいいものを静流に送っていたため、なかなか渡せずにいたのだ。 

 

「ヒナキからなら……なにもらっても嬉しいですよ」


「嬉しいこと言ってくれるな。来年はもう少しいいもの買えるように稼いどくよ」


「えへへ……楽しみにしてます。えと、その……つけてもらってもいいですか?」


 静流からネックレスを受け取り、背を向けた彼女の後ろから細やかなネックレスチェーンを回す。

 慣れないためか、いくらか静流の首に手が触れたが……。


「首筋好きなら撫でてくれてもかまいませんよ」


 などと言ってきたため一応指でちょんちょんと撫でておいた。

 少しだけ体をビクつかせたが、静流は概ね満足げだ。


「……似合ってますか?」


「ん、似合ってる」


 首から下げられた青い鳥のモチーフは、静流の豊満な胸にもう少しで埋もれるところではあったのだが、白い肌によく映えている。

 胸元で光るそのネックレスを撫でながら……。


「ずっと外しません……」


「そりゃ送った甲斐があったってもんだな」


 染み入るように言う静流に対し、雛樹はどこかおちゃらけたような態度でそう言うのだった。


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