ー兄を取られる妹の気持ち?ー
アルコールで火照った顔を冷ますために夜風に当たりながら、複雑に絡み合った言葉を慎重に解いて紡いでいく。
あくまでも、自分が今話しているのは方舟の最高戦力であるのだから。
「イメージぃ?」
「あなたは民衆から守護者と呼ばれる反面、その破壊行動の過激さのせいで軍部からは酷評されているのを知っているでしょう。私もその酷評に関しては肯定派でした……あなたはなにもかも壊しすぎる」
「しょーがないでしょお。壊さないと変になるんだからぁ」
薬物実験と、ドミネーター因子による精神汚染からくる異常な破壊衝動。
一度敵を見つければ延々と壊し続けるその凶暴性は、時に守らねばならない軍部の人間にまで及ぶことすらあった。
ガーネットはどこか拗ねたようにして、バルコニーの手すりに尻を乗せ、片膝をあげると肘をつき、視線を逸らしてため息をつく。
「そのあなたを、万が一都市に甚大な被害が及ぶようなら破壊しろと……我々、特殊二脚機甲の搭乗者は命じられているのも知っていますか」
「当たり前でしょお。お父様にさんっざん聞かされてきたんだからあ」
ガーネットはそう言ったあと、どこか遠いところを見つめるようにして浅くため息をつく。
それは面倒な話をされたから……ではなく、兵器としての自分を改めて自覚させられたからだ。
「何が言いたいのよぉ」
「その……今のあなたはただの少女にしか見えません。料理を美味しいと言い、お酒をまずいと言い……ただ純粋に喜んだり子供のように機嫌を損ねたり。雛樹と共にいるようになってから、ずいぶんと変わったようで……」
「変わってないわよぉ」
「……え?」
「変わってないわぁ。しどぉが来てから投薬実験も減ったしぃ、楽になったけどぉ……。その破壊衝動ぉ? ってやつぅ、言っとくけど全然収まってないからぁ」
ガーネットが言うには、少しでも気が昂ぶったりすれば何かを壊したい衝動に駆られるという。
それはもう人でいう三大欲求のようなもので、どうしようもないものらしかったのだが……。
「でも今は……しどぉに嫌われたくないしぃ……」
「……!!」
静流はガーネットの表情に驚いた。目を伏せて、消え入りそうな声でそう言ったガーネットの表情に、女の一面を見てしまったからだ。
「しどぉって、普段は淡々としてるから落ち着くのよねぇ。でも最近は可愛いところも増えてきたかもぉ。結構負けず嫌いなのよぉ、しどぉ」
「ふぇ……へえ、そうなんですか」
静流は、なぜだか思わず泣きそうになってしまったのだが、こらえて平然と見せた。
それは……ヒナキのそういったところは自分が見ていきたかったのに。
「あと匂いがいいわぁ。あたし、しどぉの匂い好きぃ。最近は布団に潜り込んでも怒らなくなったしぃ」
「……布団……? 一緒に寝ているのですか」
「そうよぉ」
その返答に、静流の表情が凍り持っていたグラスが手から滑り落ち、音を立てて割れてしまった。