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ー怪物との対峙ー


 緊急事態を知らせる警報は、その軍港のみならず、この展望台にまで鳴り響いていた。

 ドミネーターの襲撃を知らせるものだ。


 静流が疑問視していた補給線の上半部分が赤い閃光と共に吹き飛び、数体の小型ドミネーターが出現し、すでに空いていたゲートから海上都市に侵入。


 向かってきていた艦船に幾らかは取り付き、残った数体がこちらへ向かって隕石のごとく飛んできた。


 その状況に呆気にとられていた静流に対し、雛樹は展望台にいた住民たちに避難を呼びかけ、腰からガバメントを引き抜きセーフティーを外し、スライドを引く。


 実際、雛樹も焦ってはいた。焦ってはいたがあくまで頭は冴えていて、次行うべき行動を理解していた。

 しかし、静流は……。


「嘘……。作戦海域の周辺ドミネーターは駆逐したはず……なのに」


 まさか昨日までの任務のどこかで、見落としがあったのか。

 グレアノイド隆起の破壊が完全ではなく、現れたドミネーターが補給艦を襲ったのだとしたら。


 それが自分の失敗でなかったとしても、責任感の強い静流がそれを深刻に捉えないわけがない。

 だが、付近に落ちてきたドミネーターの地響きと砕けたコンクリートの破片が顔に当たり、強制的に我に返った。


 すぐ近くには、落ちてきたドミネーターに対し対峙している雛樹の背中がある。


「一体一体は大したことないはず……が、数が多いな」


 海上都市の軍関係者の中で使われるドミネーターのランク分け。

 その中でもαタイプと呼ばれる、中でも比較的小さく危険度の低いものだ。

 だが、それでも並みの兵士一人では対抗できない相手に変わりはない。


「ターシャ、これで本部に行くなりして二脚機甲を持ってきてくれ!!」


「……!!」


 投げ渡されたのは、雛樹のバイクの鍵だった。

 両手を椀の形にしてそれを受け止めた時、ようやく気づいた。

 己の手が震えていることに。


 怖い。ろくな装備がないまま、生身でドミネーターを前にすることがこんなにも怖い。

 いくら自分が強くても、どうしようもないものがある。自信だけでカバーできないものがある。

 ドミネーターという、人類種の天敵に対する恐怖。


 この状況はすでに企業連やその他企業の軍部に伝わっているはずだ。幾らかの部隊がこちらに向かっているはずなのだ。

 今更静流が戻ってブルーグラディウスに乗ったところで、遅すぎる。


 雛樹はこう言いたいのだ。逃げろと。


 おそらく、普通に逃げろと言ったところで逃げようとしない自分を納得させるために。


 すでに雛樹を敵性と認めたドミネーターが攻撃を始めていた。

 だが、その攻撃に怯まない雛樹の後ろ姿がそこにはあった。


 昔と変わらず、一つ間違えれば命を落とすような危なっかしい動きではあるが、自分の目で追えないほどの身のこなしで怪物を翻弄し、攻撃を加えていく彼の姿を見ているうちに……震えが止まったような気がした。



 渡されたバイクの鍵は、エンジンをかけるためではなくメットインからあるものを取り出すために使用した。

 丁度、葉月にもらっていたではないか。対ドミネーター用の兵装を。


(流石にガバメントだけじゃ決め手に欠けるか……)


 向かってきた小型の赤光の矢を回避しつつ、空弾倉を引き抜き、予備弾倉に入れ替えスライドを引く。


 4本の触手で、まるで蜘蛛のような動きをするドミネーターは本土でもよく見かけた馴染みのある型だ。

 胴体にある赤くごろごろとした目を破壊していけば自然と弱っていくのだが、やはりガバメントだけでは削りきれない。


 自分の体への負担を度外視し、弾頭をグレアノイド鉱に変換し、火力を底上げするしかない。


 雛樹の瞳がより一層の赤みを増し、腕に赤く光るラインが現れたその時だった。


「ヒナキ!! 射線から離れてください!!」


「射線っ?」


 後方になにか気分の悪くなる粒子の発生を認めた雛樹が、真横に飛び退いた。


 直後放たれた青い粒子の奔流が、ドミネーターを捉え、貫く。



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