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異性慣れ

「どうだ?」


 編み込んでハーフアップにした髪を見せるために、鏡を使って見せる。

 静流は随分と気に入ったようで、まじまじと出来上がった髪型を見ては笑顔を見せ……。


「さすがは雛樹です。素晴らしい出来だと思います」


「あんまり難しいのはできないからな、気に入ってもらってよかったよ」


「ええ、まあ貴方に髪を弄られるのが好きなので、どのような髪型でも問題ありませんでしたが」


 そんなことを言われた雛樹は、ならもっとおもしろい髪型にしてやればよかったと思う。

 髪をいじってやりながらの静流の表情は、随分と心地好さそうではあったので嘘ではないようだが。


「相変わらずゴツゴツした男らしい手です」


「ついでに油くさいかもな」


 雛樹はそう言いつつ、ピカピカに磨き上げられたガバメントをちらつかせた。

 そう、彼は自分の得物の手入れを欠かさない人だ。

 義務感……というよりも、なにかのゲン担ぎみたいだが、詳しく聞いたことはない。


「で、今日は何故きてくれたんですか?」


「何故って……まあ、アルビナさんに呼ばれたってのもある。けど、今日お前誕生日なんだろ?」


「誕……生日」


 キョトンとした表情の後、カレンダーを見てああそうかと思い出した。

 そうだ、今日は私の生まれた日だ。

 しんしんと雪が降り積もる中、カリーニングラード州の海岸沿いに張られた軍事医療キャンプで産声を上げたらしい。


 未熟児で、しばらくは予断を許さない状態であったようだが、今はこうしてピンピンしている。

 その時のことは記憶には一切無いが、よく父から聞かされていた。


「そういえばそうですね。毎年、仕事終わりに開かれる両親からの誕生日パーティーでしか気づきませんから」


「そんな贅沢な。誕生日っていうのはそこまで大した認識じゃないのか」


「お祝い……してくれないんですか?」


 などと、悲しげな瞳で見つめられながら言われてしまうとどうにも言い返す言葉が見つからない。

 肯定もできず参っていると……。


「えへ、女として意識していただいているようで安心しました。ずっと妹のような扱いをされていたので、なんだか不安だったんです」


「おい、からかってくるなぁターシャお前……。ほんっとアルビナさんに似てきたな」


 部隊にいるときの話にはなるが、アルビナも大概小悪魔的……いや、悪魔的だった節がある。

 任務中などは全くそういう素振りを見せないのだが、プライベートになると同性異性も関係なく蠱惑的な態度をとる人だった。


「私の目標はあくまでも貴方ですよ?」


「言ってるだろ。俺は目標にされるほど大した人間じゃない」


「しかし……」


「ほら、出かけるぞ。そんな格好で行くのか?」


「あ、はい。お出かけするんですね、着替えてきます」


 と、素早く着替えてきたのはいいのだがスーツだったりやたら気合の入ったドレスであったり。

 雛樹はあまりいいものではないいつも通りの服なのに対してそんなに気合を入れられてしまうので、もう少しラフなものをと頼むと……。


「こ……こんな感じでいいでしょうか」


 ホットパンツに灰色のパーカーと、年相応にそれはそれで似合ってはいるのだが少しラフすぎる格好で出てきてしまった。

 そこで雛樹が察する。


「なあ」


「は、はいなんでしょう」


「異性慣れしてないのはどっちなんだろうな」


「……うう。返す言葉もありません……」


 実のところ、緊張していたのは静流のほうだったという話だった。


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