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ー幼い頃の自分ー

 

 グレアノイド隆起の破壊に向かったウィンバックアブソリューターの編隊構成は5機。

 ブルーグラディウスを中心に蒼穹に溶け込むような青い粒子を残しながら飛行していた。


「あと15分で第一グレアノイド隆起地点です。各自、出現ドミネーターを撃破しつつ隆起を破壊してください」

《《了解》》


 編隊の隊長として振舞う静流だったが、今回参加したセンチュリオンテクノロジー含む3社、そしてそれぞれがウィンバックアブソリューターパイロットということで指示を出すのも楽であった。


 各自兵装を展開しながら、グレアノイド隆起が集まる海域に散っていく。

 幾らか接近したところで海が赤い光に染まり、次々とドミネーターが出現し戦闘状態となった。


 隆起の3分の1を破壊できた頃には各自パイロットが疲弊し、後から追ってきた補給艦に着艦し休息をとっていた。

 中でもセンチュリオンテクノロジーの補給艦は作戦海域内にあった小規模の浮島に横付けし、静流は艦から降りて探索していた。


 休息中とはいえ、作戦海域の中だ。いつでもブルーグラディウスに搭乗できるようパイロットスーツを着用し、武器を携行していた。


「海が近く、この荒れ方……。本土でのことを思い出しますね」


 そう、かつてなんの取り柄もなかった自分と、すでに兵士だった彼を。


……——。



 祠堂雛樹はその当時から、立派な兵士だった。

 生まれてからここまで、厳しい訓練を重ねてきたのだ。もはや兵士としての経歴は10年以上ある。

 

 部隊の大人たちからはまだまだ未熟な子供などと思われてはいるが、一般的に見れば十分に使える域にはあった。


「……オニーチャ」

「ん、起きたのかよ。ターシャ」


 そんな彼が任務に連れて行かれず、ベースキャンプでひたすらに銃火器の手入れをしている理由が、彼女だった。 


 白い肌、長く艶やかな黒髪と青い瞳を持つ幼い少女。

 眠たげに目をこすりながら機械油くさい部屋の入り口からちょっとだけ顔を出して覗いてきていた。


「————……」

「みんなは任務に行っちゃったぞ。俺たちはお留守番だ、お留守番」


 まだまだ日本語が話せないターシャの様子を見て、だいたいの言いたいことがわかるようにまでなってきた雛樹は、銃器を磨きながらそう言った。

 ターシャも寝起きなためか、ぶつぶつとロシア語で何かつぶやきつつ雛樹の近くにぺたりと座った。


 そして、磨かれていく銃器のパーツをじっと見つめていた。


「ちょっとだけ待ってな。これ磨いたら顔洗いに行こう」

「ウン……」


 ペースを上げて磨き終えると、雛樹はターシャを連れて近くの川へ足を運んだ。

 油で黒く汚れた手を洗い、そのすぐ隣、上流側でターシャがぴしゃぴしゃと顔に水をかけていた。


 そのあと歯を磨いて寝癖を取ると、雛樹の前にちょんと座って待機。

 最近ではターシャの髪を結う役を雛樹が任されていた。

 その日その日で出来栄えが違うが、今日はしっかりと編み込んでやって手の込んだ髪型にしてやった。

 

 


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