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ー食事の楽しさー

 テーブルに並べられる、様々な料理。

 グラタン、ハンバーグ、カレーとポピュラーなメニューから、生魚のカルパッチョ、桃の冷製スープなど、できるだけ味覚の違う数多くの料理を頼んでいた。

 その大量注文に、店員は目を丸くしていたが雛樹やガーネットはそれを気にすることなく……。


「これ全部人間が作ってるのぉ?」

「ん、あー多分な」


 この都市のことだ。料理すら機械に任せている可能性だってある……が、それはそれ、人の手でこういうものが作れるのだということをしっかり学んでもらいたいところだったため、曖昧な返事を返した。


「すっごぉい」

「おお、お前もちゃんと感動とかす……」

「無駄ぁ」

「……おっと」


 まだ一口も食べていないにもかかわらずそんなことを言い放ったガーネットに対し、雛樹はがっくりと肩を落としてしまった。


「パンにお肉挟むだけで美味しいならそれだけでいいと思うんだけどぉ」


 確かにガーネットは随分とハンバーガーやフライドポテトといったファーストフードを好んではいるが、まだまともな料理はあまり口にしていないため……だと雛樹は思いたい。

 

「いやいやお前……これだけの料理目の前にしてそれはないね。じゃあこれ全部俺が食べるから、お前はハンバーグの付け合わせのポテトでも食ってな」


 と、フォークを持ち出した雛樹がその先でちょんちょんとハンバーグを指し示した。

 熱を持った鉄板の上で肉汁を跳ねさせているデミグラスハンバークの隣に、三つほど乗ったフライドポテトを確認し……。


「ねぇしどぉ?」

「あんだ」

「いい子じゃなくなっていーい?」


 と、笑みを浮かべてはいるが目が据わっている表情を向けてきたため、危機を察知しすぐさま次の行動に移った。

 ハンバーグを小さく切り分け、フォークに刺し……。


「おーよしよし、ハンバーグだぞー、口開けろー」

「あぁん」


 ガーネットもその扱いに乗ってくれたのか、小さな口をできるだけ大きく開けて待ち構えた。


「あふぅい!」

「熱かったか、悪い」


 涙目で雛樹を睨みながら、口に入れられた熱いハンバーグを咀嚼する。

 ひと噛み毎に口の中に広がる牛肉の味と肉汁。その旨味に伴って唾液がじんわりと染み出してくる。

 そして、飲み込む頃には雛樹を睨みつけるのもやめ……。


「これおいしかったぁ」

「手の平くるっくるだな」


 一瞬でハンバーグを一皿ペロリと食べきってしまった。

 

「次これぇ」

「食べさせろってか」

「これぇ」

「わかったわかった、ちょっと待て俺も食べたい」


 と、雛樹自身も並んだ料理に手を伸ばそうとしたのだが、ガーネットがわっしとつかんだパンを口に突っ込まれてしまった。


「あぁん」


 口を開けて舌を出して早くしろとせがんでくる。

 どうやら、次の料理の味もそうなのだが……食べさせてもらえるということに喜びを感じているらしい。

 

 結局しばらく食べさせ、満足したところで雛樹も食事にありつくことができるようになった。


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