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—飽食の都市—

 かなりオシャレな女性用下着専門店に来たのはいいが……。頭から足元まで身を隠した少女を連れた男がそんなところに入るのは躊躇うものがある。


 店員も若く綺麗な女性だ。にこやかではあるが、やはり思うところがあるのか話しかけてくることはなかった。

 これは雛樹にとっては僥倖であった。話しかけられたところでどう返せばいいのかわからないのだから。


「気に入ったのあるか?」


 ガーネットはやけに露出の多いものを好んで手にしている。身に付けるなら軽い方がいい、もしくは蒸れないものがいいということだろうか。

 彼女の性格からして、色気を気にしているわけではないだろう。


「んー。しどぉはぁ?」


 身長が140センチ前後しかないガーネットは、つま先立ちになりながら上の方にあるランジェリーを取ろうとしながら雛樹に問うが……。

 

「俺は関係なくないか? お前が気に入ったやつを買えばいいんだ」


 雛樹はそんな問いかけに疑問符を浮かべ、そんな返答をした。

 ガーネットはそれを聞いて、せっかく手に取ったそれをなおしてしまう。


「……しどぉが気に入ったのならつけれるかもぉ」

「俺が?」


 自分が気に入ったものよりも、雛樹が気に入ったものがいい。特に深く考えがあってのことじゃないのだ。

 ただ、自分が選んだものはすぐ飽きると思った。それならば……と。


 はじめは戸惑った雛樹だったが、よくよく考えると可愛げのある言葉だ。

 

「そうだな……じゃあ少し場所を変えようか」

「変えるのぉ?」

「ああ。俺が気に入ったものでいいんだろ?」

「そうだけどぉ」


 そう、場所を変えたのだ。店員に雛樹が求めているものを聞くとここよりも……ということで女性用下着専門店から、スポーツ着を主に扱う店へ案内された。

 

「こんなのがいいのぉ?」

「ああ、お前はよく動くからな。これの方がいいだろ?」


 いわゆる、スポーツブラというものだ。黒無地の、ぴっちりと肌に合うものをショーツと合わせて選んだ。

 布面積の多いものはあまりいい顔をされなかったため、やはり多少の露出はするものを選んでやった。

 

 ガーネットのバストは、その少女然とした容姿に反してふくよかだ。家にあるもののカップ数はEカップ用であり、タイトなスポーツブラだと胸のラインもくっきりと出る。

 扇情的といえば扇情的だが、しっかり押さえるために動きやすくはあるだろう。


 予備も合わせて何着か購入したあと、はじめに選んだ1着はその場で身につけさせてもらった。

 マントを羽織るために身につける意義はないのだが、それでも試着室から、それを身につけたガーネットが人目もはばからず出てきたときは驚かされた。


「で、次はどこ行くのぉ?」

「そうだな、腹減ったし何か食べるか」

「さんせぇ」


 随分と機嫌が良くなったガーネットは、マントをバサバサと手ではためかせながら歩く。

 チラチラと覗く拘束衣からは、さらに先ほど身につけたインナーが見え隠れしていた。

 

 下着姿で試着室から飛び出した時、似合ってると頭を撫でられたのが嬉しかったのだろう。

 そのあと無理やり試着室に押し戻されたときはまったく怒りもしなかった。

 

 昼どきということでどこも混んではいたが、ガーネットの要望で来たファーストフード店……ではなく、しっかりとした料理が出る洋食屋にようやく座ることができた。


 4人掛けの席で、本来なら向かい合って座るべきなのだろうが……。

 ガーネットは頑なに自分の隣に座って身を寄せてきていた。


「バーガー食べたぁい」


 そして、テーブルに突っ伏してそんな文句を言う。


「べつにそれでもよかったんだけどな。折角だ、ちゃんとしたもの食べといたほうがいい」

「ちゃんとしたものってなによぅ」

「いろいろ食べて、たくさん味を経験しないとな。せっかく、金出せば料理が選べるほど出てくるんだから」


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