第4節11部ー防衛システムダウンー
と、その時だった。先ほどまで、この施設全域に響いていたなんらかの機械の駆動音が消え、代わりに施設内の明かりが点きだした。
それが予想外のことだったのか、伊庭少尉の動きに一瞬の隙が生まれ、そこを突いて雛樹は後方へ逃れた。
「っへ、なんだ、管制室にたどり着いてたのか」
施設内に、ノイズ混じりに流れた放送。それは、防衛システムのシャットダウンを告げるものだった。
荒木一等とガーネットが火器管制室にたどり着いたのだ。
防衛システムをシャットダウンさせるとともに、施設内の電源のことごとくをオンにしたのだろう。
そして、それを合図に待機していた二脚機甲部隊が島の中心へ向けて動きだす。
《防衛システムが無力化されたみたいだよーん、結月ちゃん》
「そのようですね。報告にあった侵食体のみならば、エグゾスケルトンのみで対処できるでしょ……う?」
待機していた二脚機甲部隊が動き出した直後、この島全体が周りの海すら巻き込んで大きく揺れた。
大きな音は確認できなかった。爆発によるものではない。
「東雲准尉、今のは?」
《ちょっとまって……。揺れの中心は北の山から……ちょっと、なに!?》
オペレーター、東雲姫乃の様子がおかしい。静流はなにがおかしいのかと問い……。
《さっきから燻ってた、山のグレアノイド反応が急激に上昇してきてるんだ……!》
「山?」
静流は、今待機している艦内ドックから、外部カメラを使ってその山の方向を確認した。
「……?」
山頂の土がなにやら崩れている。カメラの映像を何度かズームし、ピントを合わせていった。
みるみるうちに、その山の山頂は崩れ、次第に大きなヒビが入り……そして。
「なんですか……あれは……!」
その裂け目から現れたのは、巨大なグレアノイドの塊だった。山頂から飛び出し、さらに空に向かってぼこぼこと、溶岩のように盛り上がっていくと巨大な傘を開いた。
その中心にはぽっかりと穴が開いており、その穴の正面はこの艦隊へ向いている。
《……グレアノイド粒子の収束を確認……。なにあれ、やばいよ結月ちゃん!!》
「……!! 今すぐブルーグラディウスであのグレアノイド体を破壊します! 発艦準備を!!」
そのグレアノイド体の傘の中心に収束し、禍々しい赤い光を放ち始めたグレアノイド粒子の塊にひどい悪寒を覚えた静流が、自機のシステムの待機状態を解除し、格納庫の扉を開放させた。