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異世界ファンタジー概論  作者: NN
1.狩りとはつまりバトルではない
3/15

3.

 昼間の大衆食堂で、『偶然』見知った冒険者に出くわしたので交流としゃれ込む。

 『艶姫』レベッカ。

 彼女は今現在、仲間と二人で食事をしているようだ。

 恐らくは彼女の所属するパーティ『月の弓』の仲間だろう。


「やあ、レベッカ」

「あ、ジョルジュ」


 と言うわけで、まずは二人に声をかけてみる。


「なんでこんなところにいるのさ」


 レベッカは警戒をむき出しにして尋ねた。

 もっぱら専門は迷宮潜入で、マッピングと宝箱の回収で生計を立てている冒険者だ。

 ジョブはローグについており、その腕前も悪くはない。


「そりゃあ、お仕事手伝わせて貰えないかなあって」

「女に仕事をたかるとか、アンタってプライドないの?」

「ないっす、俺は効率優先っすわ」

「開き直りやがった……」


 過去何度か彼女とは組んだことがある。

 普通に悪くないコンビネーションだったと思う。彼女が前衛、俺が後衛というポジショニングだが、彼女も俺も似たような戦闘スタイルだ。

 お互いに罠を駆使しつつ、敵をうまく誘導して嵌める。


 そりゃ戦士とかに前衛を任せつつ魔法使いが遊撃し、その隙間をローグや罠使いが狙うスタイルが一番理想的なのは間違いない。

 だが、お互いに器用なこともあって、必要なときは相手をひきつけて翻弄したりとフレキシブルに立ち回ることはできる。

 結果的に、彼女と組んで後悔したことは過去に一度もない。


「なあ」


 もう一人、レベッカと一緒に昼食を食べていた女冒険者が俺に声を掛けてきた。


「そいつがレベッカの相方か?」

「まあマリーの予想通りよ。腕は確かだけどちょっと変なやつなの」

「始めましてマリーさん、俺はジョルジュです」

「どうも、ジョルジュ君。私はマリーだ」


 レベッカの相方は、どうやらマリーという名前らしい。

 恐らくは『岩砕き』のマリーと呼ばれている、あのマリーだろう。

 マリーが手を差し伸べてきたので握手する。


「どうもっす」

「レベッカの友達なんだろ? 別に敬語じゃなくてもいいさ」

「じゃあお言葉に甘えて、よろしくなマリーさん」


 『月の弓』の有名な前衛、『岩砕き』のマリー。

 『月の弓』は、女性しかいないことで有名なパーティーだ。だが、別段腕は悪くない。

 何せ、普通に迷宮の探索においてはトップランカーであるパーティーなのだから。


「というわけで、『月の弓』の皆とお仕事したいわけですけど」

「やだよスケベ野郎」

「ほう、ジョルジュ君はそういう人なのかね?」


 あらぬ誤解だ。

 別に俺は下心だけで動いているわけではない。

 確かに女の人と冒険出来るというのは嬉しいが、それはメインの理由ではない。


 普通にこいつらと一緒に迷宮を探索していれば、おのずといいレベルの敵と戦闘になるだろう。

 だが、そのあと魔物の死骸を解体するだろう。その際素材になる部分は剥ぎ取る。だが、問題は素材にならない部分は捨てて、あろうことか燃やしてしまうのだ。

 正直俺からするともったいない。

 

 理由は二つ。

 まず最初に、俺ならばそこから経験石も剥ぎ取れる。この経験石、というアイテムは目が飛び出るほどに貴重なものだ。

 次に、素材にならない部分も貴重だ。その分だけでもスライムにくれてやりたい。スライムはそれを吸収して自分の糧にしてくれるのだ。

 つまり、本音を言うと、こうやって気心の知れているやつのパーティーに参加して迷宮探索するというのは、俺にとっては経験石を剥ぎ取れて、スライムをタダで成長させられるボーナスゲームなのだ。




「素材はほとんどそっちに渡すよ。俺はあくまでサブに回るからさ。俺が欲しいのは、素材剥ぎ取った後の魔物の死骸の余り」

「えー、でもシンプルにアンタが増えると分け前が減るじゃん」

「荷物持ちが一人増えたって考えて欲しい。アイテムボックス使えるのって割と重宝すると思うんだけどなあ」


 俺は自分をアピールする。


 ご時勢というべきか、俺をパーティーに入れてくれる人は実は少ない。

 何せ俺はソロでちょっと強くなりすぎた。

 いまさらパーティーに入れてくれって、何を考えているんだ、もしかして偵察か、という風に勘ぐられること数回。


 それにスライムを使役しているというのもネックだ。

 魔物を使役できるやつと夜一緒に寝られないという偏見があってちょっと敬遠される。

 魔物に寝首をかかれる、というわけだ。


 ということで、結局俺は仲間が乏しい状況にあるわけだ。


「レベッカ、普通にいい条件だと思うが」

「まあそうなんだけどね、マリー」


 アイテムボックス持ち、というのはかなり貴重な技能である。

 何せ、多くのアイテムを、重量に関係なく持ち運べるというのは、冒険する上で非常に便利である。

 マリーはその技能に心動かされたようだ。 


「お願いします、ちょっと女の子と冒険したかったんです」


 あとは、ちょっとした下心。


「こういうやつなの、こいつ」

「いいじゃないか、私はこういう正直なやつ、嫌いじゃないよ」

「え、ちょ」

「やったー!」


 結局。

 俺は何とかこの話を押し込むことに成功した。


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