5.
土魔術Lv2。
これほど重宝する魔術は珍しい、と俺は思っている。
俺はいつも落とし穴の作成に、この魔法に頼っている。
何せ、森のオークやゴブリン、コボルトにハウンドドッグ、どの魔物も簡単に落とし穴に引っかかる。そして機動力を落とした彼らは絶好のカモになる。
「私、必要ですか?」
「おう、もちろんさ」
落とし穴に落としては、頚動脈を掻っ切って魔物を殺していく。
もはやルーチンワークとなりつつある俺の行動を見て、ネイティがぼそっと呟いた。
まあ、この作業を見ていると別にネイティがいてもいなくても同じぐらいの速度で魔物を殺せてはいる。
「君は風魔法も使えるし、歌唱魔法も使える。幻惑の歌のおかげで、魔物が以前より落とし穴に落ちてくれるようになった。しかも風魔法のおかげで簡単にとどめをさせるようになった。君のおかげだよ」
「……あまり貢献できているようには感じません」
「いやいや、細かいようにみえるかもしれないけど、大きな活躍だよ」
どうも、ネイティは俺の流れ作業のような狩りを見て、想像との違いにちょっと気抜けしているようだ。
もっとガチ戦闘を期待していたのだろう。
現実は、こうやって圧倒的優位を利用したちまちました狩りだ。
スライムに死骸を吸収させて終了だ。
「このスライムは、貴方の使役魔物ですか?」
「ああ。便利だぜ。魔物を燃やす手間を省けるし、餌代もかからない。何なら、罠としても使えるし、今まで損をしたことがないな」
「はあ、素晴らしいですね」
「何だ、口調が棒読みだぜ」
「いえいえ、ご主人様の魔物の狩り方が安全ですので、気を張っていた自分が馬鹿馬鹿しくなっただけです」
「一応気を張っとけよ、魔物の気配察知の練習だからな」
「はい」
言いつつも、ネイティはそれなりに働いてくれている。
気配察知で魔物を見つけては、先手を打って罠に誘導する。
これは中々一人では難しいところだった。
空を飛べる分、罠への誘導もしやすいという所を考えると、やはり彼女はお買い得だった、と見て間違いなさそうだ。
「ところでご主人様。今日も魔物の森の奥に進むのですか?」
「ん? そのつもりだ。俺の目標はもっと奥のほうにあるからな」
「……大丈夫なのでしょうか」
「ああ、まあね。いざとなれば逃げる算段もついている。安心しろ」
逃げる算段というのは、透明のスクロールのことである。
これをつかって透明になれば魔物には見つかるまい、というわけだ。
臭い落としと気配隠蔽を併用すれば逃げられるだろう。
「ところで、ご主人様はどこを目指しているのでしょうか」
「ああ、言ってなかったっけ」
「はい」
「ん。じゃあ教えるか」
俺が魔物の森に潜っている理由。
それは、またまた結構なギャンブルなのだが、儲け出があるので首を突っ込ませてもらったというだけのこと。
「三つのうちどれかを果たしたい。盗賊狩り、森の解放、ハーピィの集落との交渉」
いった途端、彼女の顔が色を無くしたのが面白かった。