3.
ハーピィの姫は、やはり良好物件であることが分かった。
「はあっ!」
魔物の森。
オークの頭に岩を落として、一匹目を殺す。
また、風魔法でかまいたちを生み出して、オークの首を狩る。頚動脈からの大出血でオークは事切れる。二匹目。
最後のオークリーダーに対しても風魔法。しかし余り効果はない。
そこで、彼女は歌唱魔法を使用。
彼女自身の攻撃力、素早さを補助し、さらにオークリーダーを混乱させることに成功。
そしてそのまま、空中から一気に地上へと滑空。重力による加速を得たまま、オークリーダーにもう一度岩をぶつけた。
流石にこの一撃は堪えたか、オークリーダーは頭蓋の骨を割って脳漿をこぼして倒れた。
瀕死の一撃だ。
そこに風魔法を一撃加えて、オークリーダーも事切れた。
「素晴らしい」
「いえ」
俺は思わず呟いた。
風魔法も、歌唱魔法も、どちらも有用だ。
その上、位置エネルギーをそのまま武器に使え、空中を立体的に使用して加速用の空間を確保出来るという二つの利点を持つ飛行能力は、やはり地上の生き物にとってこの上ないアドバンテージになるようだ。
「君を仲間にして本当に良かった」
「ありがとうございます」
彼女は淡々と受け答えた。
「経験石と技巧石はまあまあ。素材は普通。残りはスライムが食べているから良いとして」
俺は戦果を確認している。
彼女はそれを横でじっと見ている。
どうやら、経験石と技巧石が物珍しいようだ。
「その、経験石と技巧石、とは」
「ああ、秘密にしてくれ。これは俺の能力で、魔物から経験石と技巧石を取り出せるんだ」
「そうですか」
そう言いながら、彼女は経験石と技巧石から目を離さない。
光り物が好きなのだろう。そういえばカラスなどの鳥類は光り物を集める傾向がある。
「ちなみに、これらは魔物の力の源を閉じ込めた魔石だ。つまり、お前に使ったりしたら、強化が簡単に出来る」
「そうなのですか?」
「ああ。まあ、俺は使うつもりはないが」
「何故ですか?」
最もな質問だ。
だが、俺は誰もが俺と同じ答えを選ぶものだと思っている。
「自分の魂が耐えられる保障がないからだ」
「?」
ネイティには分からないかもしれない。だが、まあこれでいい。
俺はこの世界の人間ではない。そのため、この世界の魂を体に受け入れることは、かなりの負担になるのだ。
技巧こそ受け入れは出来るものの、経験は厳しい。
そのため、俺は経験石を売り払うしか出来なかったのだ。
「まあ、細かいことは気にするな」
「そうですか」
また、契約している魔物や奴隷に対しても経験石を使うことは憚られる。
俺の契約スキルはあくまでLv2なのだ。高すぎるレベルになってしまうと、俺の制御が効かなくなるのだ。
「頑張ってくれよ」
「? ……分かりました」
ネイティの頭を撫でておく。
彼女は一瞬驚いたようだが、特に何も反抗せずされるがままであった。