そして始まる 後
そうして、緩やかに穏やかに過ぎた日は7年になろうとしていた。
後一年だね、そう言って笑う彼女を見ながら、2人でこれからの未来について話したのは、ついこの間のことだったのに。
俺は今、病院のベッドにいる。
詳しい病名なんて覚えてないが、俺の命は来年ー彼女の卒業式ーまで持たないらしい。
思わず笑ってしまった。
笑うしか出来なかった。
俺の生に意味はあったんだろうか?
母を亡くした父の唯一の願いは、俺の幸せだった。
だから、恋い慕った彼女を俺の婚約者にしたのだ。
そんな父よりも早く逝くなんて。
俺以上の親不孝者はそうはいないだろう。
結局、そらから数ヶ月後、俺は呆気なく死んだ。
死ぬことに諦めがついても、彼女だけは諦め切れなかった。
俺以外の誰かとなんて、幸せになって欲しくない。でも、彼女が一人で泣くのも嫌だ。それならば、俺と一緒に死んでくれればいい。
そう願ったが、伝えるつもりは一切なかった。
実際、伝えることなく俺は死んだのだ。
なのに今。
彼女は俺の傍にいる。
「沙夜、なんでここに…」
「だって侑司さんが私を置いて逝ってしまったから。」
「だからって、こんな、」
死んでまで夢を見ることが出来るのか。
そう、考えたけど、どうやら本物の沙夜だ。
「だって侑司さん、望んだでしょう?」
「望んだ?」
「俺と一緒に死んでくれって、望んだでしょう」
そう言って微笑んだ沙夜は、とても美しかった。
「それに、侑司さんは私じゃないとダメでしょう?それと同じで、私も侑司さんじゃなきゃダメなのよ。大好きだから、」
だから、追いかけちゃった、そう言って抱きついて来た沙夜を抱き締め返せば、涙がこぼれた。
俺はきっと、何度死んでも何度生まれ変わっても、彼女を見つけ出して愛するんだろう。
そして彼女もきっと、俺を見つけ出して愛してくれるんだろう。
そう、確信した。
ここでおしまいです。
読みにくくてすみません。
次に登場人物紹介載せてます。