表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
或る話し  作者: 癒杏
6/8

そして始まる 前


昔から、大切な子がいた。


可愛くて可愛くて、最初は妹が出来たみたいだ、と嬉しかった。5つも歳下の彼女に優しくしたかったし、大切にしたかった。

でも、俺には母がいないから、両親が揃っている彼女が妬ましくもあった。

たまに、優しく出来なくて冷たくあしらうこともあったけれど、それでも彼女は一瞬だけ悲しそうな顔をしたあと、すぐにごめんなさい、と謝るから。

君が悪い訳じゃないのに、と思いながらも、素っ気なくいいよ、別に。としか言えない自分を、何度殴りつけたくなっただろう。


話し掛けたら嬉しそうに微笑んでくれる彼女が愛おしくて、独り占めしたくなったのは、いつしか妹以上の感情を持ったのは、いつだったんだろうか。

はっきりとは覚えていないけど、確かに彼女は俺にとっての特別になった。

俺は今まで以上に優しくしたし、慈しんだし、俺に出来る精一杯で彼女を守って愛した。

別に報われなくても構わなかった。彼女が俺に向けて笑ってくれるなら、それだけで俺はいいと思っていた。


それから暫くして、俺と彼女の婚約が決まった。

俺が15歳彼女が10歳の時だった。彼女の父との約束で、結婚は彼女が高校を卒業してからに決まった。


予想外過ぎて、どんな反応をしたらいいのか分からなかったけど、彼女を見れば嬉しそうに満足そうに笑っていたから。

ならば、と。

俺がこれから先、愛するのは彼女だけ。

俺が出来るすべてで、彼女を守り慈しみ幸せにしようと誓ったのだ。

彼女に幻滅されないように、今まで以上に物事に取り組んだ。


正直、彼女を欲望のままに抱いてしまいたいと思ったこともあった。それでも、彼女が、どうしようもなく大切だから。

俺は手を握るだけで、それだけで充分 幸せな気持ちになれることを知っていたから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ