すべての始まり
「なんで、こんな…」
「あぁでもアナタ、この子、幸せそうに笑ってるわ。」
涙が止まらない。
俺の娘は、今日 息を引き取った。
それも、幸せそうに微笑んで。
すべての始まりは、きっと、2人が出会った時から始まっていた。
俺の娘と親友と呼べるアイツの息子、小さい頃から幼馴染みとして、2人で仲良く過ごしていた。
初めは、兄妹のようだったが、少しずつ、俺から見ても分かるくらいに、2人の関係は緩やかに穏やかに変わっていった。
親友がそんな2人をみて、「侑司は沙夜ちゃんが好きなんだよ、だから、沙夜ちゃんを侑司のお嫁さんにくれ。俺が言うのもなんだが、そこら辺の男よりもうちの侑司の方が将来有望だし、イケメンだし、沙夜ちゃんのこと大切に出来るし、大好きだし、何よりも俺の息子ってだけで安心出来るだろ?」なんて笑いながらも、自分の息子を案じるように言ったから。
沙夜よりも5つ歳上な侑司は、まるで沙夜を本物のお姫様のように、宝物のように、大切に大切に扱ってくれていた。
それはさながら、 物語のような王子様とお姫様のようだった。
だから俺は、沙夜を侑司にくれてやることにしたのだ、こんなにも早く娘を嫁に出すことになるなんて、いやいや、まだ結婚なんてさせないし、沙夜はまだ16にもなってない、とも思ったりして、それでも嬉しそうに笑う親友と子供たち2人を見れば、この判断が間違ってないと思ったのだ。
この2人には、幸せな未来が待っていると、信じて疑わなかったのだ。
なのに、どうして、
どうして、俺たちは今、こんなにも悲しみにくれているのだろう。