終わりの始まり
親子2人で暮らしてきた。
親子2人でなんとか、生きてきた。
コイツが産まれた時に、俺の妻は死んでしまった。
俺も一緒に死にたかった。コイツを殺して、俺も死ねば、あの世で親子3人で暮らせるんじゃないかと、真剣に考えた。
妻は寂しがりやだから、一人で泣いているんじゃないのか。
妻は優しいから、誰かにつけこまれているんじゃないのか。
妻は美しいひとだから、他の男に言い寄られてるんじゃないのか。
考えてる間、なんやかんやコイツの世話をしていたら、コイツが妻にそっくりなことに気がついた。
俺の大事な妻。
“たまたま”が重なって、知り合いになって、友人になって、恋人になって、夫婦になった。
周囲から祝福されない結婚だった。でも、親友だけは祝福してくれたから、俺たちはそれだけでよかった。
コイツが妻にそっくりなことに気がついたから、今、死ぬのは諦めた。だって、いつかは俺も死ぬのだから。
だったら、妻には少し待ってもらおう。
寂しいかもしれないが、いっぱい、土産話を持っていくから、待っててくれ。あの世で会えたら、いっぱい抱きしめて、どれだけ俺がお前を愛してて、どれだけ俺が寂しかったか、伝えるから。
もしも、誰かにつけこまれて、悲しい想いをしたならば、そいつを見つけだして、ぶん殴って謝らせて、それからいっぱいお前を甘やかすから。
もし、もしもだけど、お前が他の男に言い寄られて、他の男にになびいたとしたら、もう一度 振り向かせてみせるから。
だから、ごめん、もう少しだけ待っててくれ。
せめて、お前に似た息子が幸せになれるその日まで、待っててくれ。
俺たちの息子が、幸せになったら、幸せになったことを見届けたら、俺もそっちに行くから。
そう、誓ったのに。
なのに、なんで、こんな。
もう、どうしたらいいのかわからない。